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まもなく5月30日の「ごみゼロ」の日。リサイクルの取り組みも広がっていますが、難しいのが「衣類」です。古着として使われても、最後はほぼ焼却処分されています。それなら、土に埋めて「消して」しまおう! と画期的な試みをしている企業があると聞いて、取材しました。(朝日新聞withnews・松川希実)1日約130台分の服を処分ネットなどで流行の服が安価に手に入るいま、ファッション業界は大量生産・大量消費・大量廃棄による環境負荷が非常に大きいとして、国際的な課題になっています。環境省によると、日本の家庭から「可燃ごみ」「不燃ごみ」として処分される服は年間約44万トン。平均すると1日あたり大型トラック約130台分の服が処分されているそうです。しかし焼却したとしても消えるわけではなく、「焼却灰」となって結局埋め立てられています。推計では国内の最終処分場(埋め立て地)はあと24.9年で満杯となってしまいます。そんななか4月、東京で開かれたサステナブルファッションEXPOを訪ねました。世界各国から集まった「サステナブル(持続可能)」をうたうエコ素材や、廃棄せずに新たな製品に変える「アップサイクル」の試みなどを紹介する企業で、にぎわっていました。その中で、記者の目にとまったのが、大阪・関西万博の公式キャラクター「ミャクミャク」のロゴがついた服と一緒に、「土」を展示しているブースでした。万博のスタッフ服が堆肥(たいひ)場に?このブースは繊維素材を販売・開発する大阪市の企業V&A Japanの展示でした。スタッフは「通常のポリエステルは土に埋めると100年は残ってしまいます。でも我々のポリエステルは、『特別な土』に埋めれば1年で跡形もなくなります」と説明します。「大阪・関西万博の運営スタッフ用に提供したユニホーム、約2万着も、すでに回収して、牛のふんとともに、埋まっていますよ」一体どういうことなのでしょうか。後日、V&A Japanの宮本淳・代表取締役会長に詳しく話を聞きました。万博に協賛して製作したのはポロシャツやパンツ、アウターなど、計1万6200着。せっかく作った服を土に埋めてしまうのは、もったいないような気がします。そう言うと、宮本さんは「我々の目指す仕組みを知っていただくために、あえてやったことではあります」と話しました。企業ロゴなども入っているため、宮本さんは「なかなか普段着にはしないだろうし、記念に持ち帰ったとしても、いずれはごみとして出され、焼却や埋め立てられてしまう。それなら全て回収して、土に還(かえ)すまでを実証したいと思いました」と語ります。目指したのは「ごみゼロ」の仕組み作りV&A Japanが作った繊維「CRAFTEVO ReTE(クラフトエボ・リーテ)」(通称リーテ)は、生分解性ポリエステルです。「Return to Earth」の頭文字から名付けており、着終わったら地球にかえすというコンセプトを掲げて開発され、「堆肥を使って処分すること」が特長だそうです。宮本さんは2010年に大手商社から独立してV&A Japanを起業しました。もともと北米やヨーロッパ諸国のアパレルブランドと取引してきましたが、2005年ごろから環境問題に敏感なアウトドア関係の企業を中心に、より環境に配慮した素材を求める声が上がり始めました。環境に配慮した素材を開発するには、長期的な投資が必要です。志を同じくするメンバーと独立を決めたそうです。環境のため「リサイクル」以外の選択肢も日本でも「リサイクル」という言葉は定着しています。でも、宮本さんは「リサイクルって、聞こえは良いのですが、環境負荷を考えると必ずしも良いことばかりではないんです」と説明します。リサイクルとは廃棄せずに資源に戻して再利用すること。衣類ではたとえばペットボトルを繊維に変えて洋服にするリサイクルがあります。記者も「環境に良さそう」と、いくつか購入したことがあります。しかし宮本さんは「一度、ペットボトルを繊維にしてしまうと、やはり最後は、ごみとして焼却や埋め立てる末路が待っています。そう考えるとペットボトルは同じペットボトルとして使い続けられる水平リサイクルの方が良いのかもしれません」と言われて、ハッとしました。衣類を回収して、新しい服に作り替える「ケミカルリサイクル」もあります。しかし宮本さんは、「染料や汚れを落とし、熱や化学処理を加えて、分子レベルまで戻して、またポリエステルを製造し、繊維にする必要があります。それだけの工程を踏むと、石油から通常のポリエステルを作るよりも、排出される二酸化炭素の量は増えてしまうこともあるのです」と指摘します。一方で、宮本さんは「リサイクルには限りある石油資源を節約できる意義はある」と言います。しかし、大半の服はポリエステル以外にも綿やウレタンなどの素材が混ざっており、分離してリサイクルすることが難しいため、結局、焼却処分されているのが現状です。「土に還(かえ)す」にこだわった理由「土に還す」にこだわるリーテですが、宮本さんは原料としても「限りある石油資源はなるべく使わない」と言います。原料の95%はサトウキビの搾りかすや、パーム油。植物なので育つ際に二酸化炭素を吸収でき、焼却時に排出される二酸化炭素を相殺できる(カーボンオフセット)の仕組みを採り入れているのだそうです。ただ、商品の一部には100%石油由来のポリエステルもあります。通常のポリエステルは自然界では分解されにくく、地中に数百年残るとされています。それでも、リーテが「土に還る」のはなぜなのでしょうか。違いは、ポリエステルを構成している分子「モノマー」にあるそうです。通常のポリエステルは水をはじきますが、リーテのモノマーの一つは水を吸ってなじみやすくする性質にしています。継続的に水を含む環境に置いておけば、水で繊維が腐る「加水分解」が起きるそうです。また、別のモノマーには、分子がふんわりとつくようにする性質があると言います。通常のポリエステルは分子が強く結びつき合っているため、土中の微生物が食べることはできません。しかし、これら二つのモノマーを持つリーテは、「特別な土に埋めると、だいたい8カ月ぐらいで加水分解により繊維がぼろぼろになり、8カ月過ぎたあたりから微生物が食べられるやわらかさになります。微生物が食べると、あとは水と二酸化炭素だけに分解されてしまいます」と言います。「特別な土」の正体宮本さんによると、リーテの強度は通常のポリエステルが100とすると、85程度と落ちるそうですが、衣類として使う分には遜色ないと言います。宮本さんが5年間愛用しているリーテのパーカは、週1で洗濯乾燥機をかけているそうですが、「日常の洗濯など一瞬の作用では加水分解の反応は起きません」と話します。そして、できる限り長く着古してもらい、どうしても廃棄せざるを得なくなった時も、服を回収して、「土に還す」ことで環境負荷を減らすのがリーテの構想です。ベルギーにある生分解性や堆肥化の独立系検査・分析機関、OWSによって、約4年間にわたる試験を実施しました。紙や綿の主成分であるセルロースを基準物質にして比較したところ、リーテはセルロースと同様に管理された堆肥条件下であった場合、100%分解すると報告されました。 「検査で使われたのは植物性堆肥だったので、我々の想定よりも時間はかかりました」使うエネルギーは「ショベルカーだけ」リーテの処分の秘訣(ひけつ)はその「特別な土」にありました。それは「動物性堆肥」です。V&A Japanが契約しているのは愛知県東海市にある牧場です。この牧場ではもともと乳牛を飼育し、糞尿(ふんにょう)が日に3トン出ることに悩んでいました。産業廃棄物として引き取ってもらうには費用がかかり、自分たちで処理できないかと、牧場に500平方メートルのビニールハウスを5棟建てて「堆肥場」にしました。ふんを埋めると、微生物が分解して、堆肥になります。周辺の食品加工会社から出る野菜や肉の切れ端も受け入れて、処分しています。この堆肥場に、リーテの服も埋めています。やることは1日1回、食品加工のごみを入れて、ショベルカーで土を掘り起こして空気を入れるだけ。食品加工のごみが微生物の良い「エサ」になり、土の中で微生物の活動熱が発生し、平均70度に保たれて、服の加水分解を促すと言います。宮本さんは「特別なエネルギーはショベルカーを動かすぐらい。家庭ごみとして焼却されるときと比較してCO2排出量は40%削減できます」と話します。大阪・関西万博のスタッフ用ユニホームは、縫い糸、ファスナーまでリーテの素材で作ってありました。一部、リーテで製作できなかったファスナーのスライダーを外して、4月までに「全て埋めた」とのこと。来年3月に開幕する横浜園芸博に、ユニホームが分解されてできた「堆肥」も展示される予定だそうです。作って、処分まで「一連の流れ」で宮本さんは「処分することから考えて、環境負荷が少ないものを作り、回収して、分解処理するまでの一連の流れ自体を販売したい」と考えています。まずは企業やチームなどのユニホーム、そして服だけでなく食器なども作り、産学連携で学食へ販売していく方針です。使い終わってからも、責任を持って、回収して処理できるからです。また、現状では、堆肥場はあくまで焼却施設に変わる「処理場」として使っていますが、同時に土壌の安全性についての研究も大学と連携して進めています。検証では、植物を育てることに科学的な問題はないと分かってきました。次に、日本国内の使われていない田畑で、綿栽培をする際の堆肥として使って、実験を進めていくそうです。将来、服などを堆肥に埋めて処理することはもっと一般的になるのでしょうか? 特別な堆肥場が必要となると、ハードルも高そうに感じますが、宮本さんによると「堆肥場はそんな特別なことはしていないので、どこでも再現が可能です。堆肥にエサ(生ごみ)をあげて、空気を送り込むだけなので」とのこと。宮本さんによると、欧米では、街中にゴミ箱と同じ感覚で、公共のコンポストを設置して、堆肥による処理を推進する自治体もあるそうです。堆肥で分解できる素材がテイクアウト用のカップなどとして市民に浸透しており、コンポストのごみ箱に捨てられて、焼却せずに堆肥処理されているそうです。「地球に助けられ、最後は地球に還していく、そんなインフラが日本でもできることを一番望んでいます」と話していました。ニュースが身近になるメディア「withnews」https://www.asahi.com/withnewsTikTokアカウント:https://www.tiktok.com/@withnewsYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@withnewschannel







