【社説】高市首相肝いりの情報機能強化法 歯止め策後回しへの懸念2026年5月27日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●政府の情報機能強化に向けた第1弾の法律が与党などの賛成多数で成立した●国会の関与など、権利侵害への歯止めとなる具体的な仕組みは盛り込まれなかった●後にはスパイ防止関連法制の検討が控える。リスクへの手当ての後回しは危うい

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高市早苗首相が旗を振るインテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化に向けた第1弾の法律が成立した。ただ、市民への監視強化やプライバシー侵害への歯止めとなる具体的な仕組みは盛り込まれなかった。政府は厳格な運用に努めるとともに、懸念の払拭(ふっしょく)に取り組むべきだ。 首相が議長を務める「国家情報会議」と、その事務局として、各省庁の情報を集約・分析する総合調整権を持つ「国家情報局」を新設する。27日の参院本会議で、与党などの賛成多数で可決・成立した。立憲民主党、共産党、れいわ新選組などは反対した。 野党からは、国会の関与など、情報活動に対する民主的な統制の強化を求める意見があったが、政府は新組織に新たな権限が加わるわけではないとして応じなかった。 高市政権はこの後、自民党と日本維新の会の連立政権合意書に盛り込まれた、スパイ防止関連法制の策定や対外情報庁の創設に取り組む。司令塔となる組織の整備を先行させ、情報活動の強化に伴うリスクへの手当ては後回しというのは、いかにも危うい。今の段階から歯止め策を講じるのが本来ではないか。 参院審議では、他党の賛同が得られず、否決されたが、立憲民主党が修正案を提出した。司令塔組織の設置には賛同したうえで、人権侵害や政治的中立性からの逸脱がないかをチェックする第三者機関の設置や、国会報告の義務化などが盛り込まれていた。 衆参両院の内閣委員会で、プライバシーへの十分な配慮や政治的中立性の確保などを求める付帯決議が可決されたが、法的拘束力はない。やはり、制度的な歯止めが必要だ。特定秘密保護法などの運用を監視するため、国会に設けられている情報監視審査会の機能を強化し、情報機関を対象に加えるのも一案だ。 政治と情報組織の一体化にも懸念が残った。既存の国家安全保障会議と新設の国家情報会議を構成する閣僚は、ほぼ重なる。情報組織が時の政権党に恣意(しい)的に利用されることがあってはならない。付帯決議には、事後に検証ができるよう、国家情報会議の議事の記録を作成し、適正な期間保存するよう求める項目も盛り込まれている。確実に実行されねばならない。 人材配置のバランスにも課題がある。内閣の情報機関のトップは歴代、警察官僚で占められ、構成も警察出身者が多数派で、偏りが指摘されてきた。人物本位・能力本位の適材適所の人事が求められる。情報を専門にする人材育成も不可欠だ。【そもそも解説】インテリジェンスとは?政府は新たに何をつくるのか「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする