2026年5月24日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)の新議長に、ウォーシュ氏が就任●FRBに利下げを求め、圧力をかけ続けてきたトランプ大統領が指名。金融政策の独立性の維持に懸念が残る●新議長は経済の動向に即した政策運営に徹し、大統領は独立性を尊重すべきだ

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米連邦準備制度理事会(FRB)の新議長に、元理事のウォーシュ氏が就任した。指名したトランプ大統領はFRBに利下げを求め、圧力をかけ続けてきた。物価の安定に重要な金融政策の独立性が守られるのか、懸念が残る。新議長は大統領の意向と一線を画し、経済の動向に即した政策運営に徹するべきだ。 ウォーシュ氏は、2006年に史上最年少の35歳でFRB理事に就き、11年まで務めた。物価の安定を重視し、量的緩和に批判的な姿勢で知られた。最近は、人工知能(AI)の活用で生産性が高まって物価が上がりにくくなる、との見方を示し、利下げに動く余地を示唆している。 トランプ氏は昨年末、「私に反対する者はFRB議長になれない」とSNSに投稿。新議長による利下げへの期待を露骨に語ってきた。議会の公聴会では「厳格に独立性を保つ」と強調したウォーシュ氏に、野党・民主党から「トランプ氏が選んだ操り人形」との批判が出た。新議長の宣誓式で大統領は「完全な独立を望む」「やりたいようにやってくれ」と述べたが、額面通りには受け取れない。 景気刺激や政府の利払い抑制へ利下げを望むトランプ氏は、意向に従わないパウエル前議長を「愚か」「遅すぎる」などと執拗(しつよう)に攻撃。米司法省は、FRB本部ビルの改修工事を巡って議会で虚偽の証言をした疑いで一時、刑事捜査の対象にした。パウエル氏は「政権による脅し」と反発。慣例を破って議長退任後も理事にとどまった。 前議長には、コロナ禍後の高インフレを「一時的」と見誤る失敗もあった。ウォーシュ氏は「致命的な政策の誤り」と批判している。 ただ、急速な利上げに転じた後は、深刻な景気後退を招かずに物価高をおおむね抑え込んだ。FRBの対応が国民に信頼され、中長期のインフレ予想が大きく上ぶれしなかったからこそ可能だった。 米国のイラン攻撃に起因する原油高や高関税措置の影響で、米国内ではインフレ圧力が再び強まる。議長の交代後初の6月の政策会合では、物価と雇用をにらみ、難しい判断を迫られる。拭いきれない独立性への疑義は、新議長の足かせになり得る。FRBへの信頼を損ね、政策の効果を弱めかねない。情報発信に消極的な姿勢も気がかりだ。 インフレ圧力の再燃やFRBの混乱は、トランプ氏が招いたものだ。米国経済が揺らげば、日本を含む世界への悪影響も大きい。同席した宣誓式での言葉通り、FRBの独立性を尊重するよう求める。次期FRB議長に指名のウォーシュ氏とは 最年少35歳で理事就任「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする