(後藤正文の朝からロック)建物が持つ響き、復元できない2026年3月22日 5時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
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友人の招きで、今月に閉館する北海道・苫小牧市民会館の大ホールでコンサートを行った。 1968年に開館したホールは、六角形のモチーフがちりばめられた意匠が美しく、音響設計も素晴らしかった。2階の最後部でも、マイクを通さずに鳴らされた友人たちの演奏の機微がよくわかるほどだった。昭和を感じるレトロな雰囲気からは、市民たちが様々な催しを楽しんできた歴史を想像させられた。率直に、このような素敵なホールを潰してしまうことを残念に思った。 隣に建設された苫小牧市民文化ホールも見学させてもらった。真新しい施設には大小のホールだけでなく、キッズスペースや託児室があり、カフェがあり、楽器やバンド練習用のスタジオまで併設されていた。それらが緩やかなスロープでつながれていることも印象的だった。 市民会館に戻ると、建物の老朽化が浮き立って感じられた。不必要な段差も多く、バリアフリーの観点から考えると厳しい。建物だけを考えれば、新しい文化ホールのほうが市民に開かれていた。私たちの社会の前進を感じる施設だった。 しかし、ミュージシャンの視点から眺めると、歴史ある素晴らしい市民会館を改修して、どうにか残す方法はないのかという想(おも)いが拭えない。ホールの響きは固有のもので、音響設計と建築だけでなく、時間の経過と活動の積み重ねによって熟成されるところがある。壊したら失われる特別な響きは、どれだけ費用をかけても復元できない。 惜しくも解体される歴史的な建物の音響特性を記録して後世に残す取り組みを、音楽や映画の音響技術者たちと始めた。苫小牧市民会館のデータは、コンサートの前日に収録した。ホールのみならず、建造物にはそれぞれの響きがあり、それらが壊されるときには、その響きも永遠に失われることを、多くの人に知ってもらいたい。(ミュージシャン) ◇毎月第4日曜日に掲載します。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
