トランプ外交を動かす頭脳とは 国際秩序を壊す「革命」の正体有料記事ダラス郊外=青山直篤2026年5月12日 5時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする Make America Great Again(米国を再び偉大に)――。ドナルド・トランプ大統領を支える熱狂的な政治運動MAGAは、米国を飛び出して世界を混乱に陥れた。戦後の国際秩序を再編する「革命」を掲げたトランプ氏のMAGA外交の根底に流れるものとは、何なのか。

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2025年1月20日、大統領に復権したトランプ氏は「常識に基づく革命を始める」と宣言した。 外交も例外ではない。戦後、民主主義やグローバル化を旗印に米国が主導した「リベラルな国際秩序」を塗り替える動きを加速させている。記事のポイント・トランプ大統領のMAGA運動は、革命的な秩序の転換を求める保守派の思想運動と連動してきた・「クレアモント研究所」とヨラム・ハゾニー氏とは・なぜトランプ氏が知識人を引きつけたのか・イランへの先制攻撃がもたらしたものは・王のように振る舞うトランプ氏と「革命」の行方 読み解くキーワードの一つが「ドンロー主義」だ。 トランプ氏は南米ベネズエラを攻撃し、ニコラス・マドゥロ大統領を連行した今年1月3日、こう語った。 「国家安全保障戦略(NSS)の下、西半球における米国の覇権は揺らがない」 前月に発表した外交・安全保障分野の指針NSSでは、五つの中核的国益の筆頭に「モンロー主義のトランプ系」を実行することを挙げた。自らの名前をもじってドンロー主義と呼ぶ。 ベネズエラを攻撃して石油利権を奪い、グリーンランドや隣国カナダは米国領になるべきだと主張する――。ドンロー主義は国際法を軽んじ、権益を追求することを意味している。国家安全保障戦略(NSS)で示された五つの「極めて重大な中核的国益」・モンロー主義の「トランプ系」を実行に移す・米国経済に打撃を与える外国勢力を抑止する・欧州の自由と安全を保つため、同盟国を支える(「欧州の文明としての自信や西洋としてのアイデンティティーを(米国が)回復させる」と主張)・敵対的な勢力が中東を支配することを防ぐ・米国が先端技術分野で世界を先導 もう一つの重要な要素は、欧州に対する姿勢の激変だ。 戦後、米国には自国の平和が欧州と深くつながっているという考えがあった。だが、トランプ政権は敵意や侮蔑をむき出しにする。 欧州連合(EU)の枠組みでグローバル化を推進した欧州は「ポリティカル・コレクトネス(政治的正しさ)」が行き過ぎ、非白人移民の「侵略」から文明を守れていないなどと非難している。知識人を刺激したトランプ大統領 源流を探るには、MAGA運動が本格化した10年前、つまりトランプ氏が初当選した2016年にさかのぼる必要がある。 トランプ氏の登場は、価値観の多様化やグローバル化が進む現状に危機感を抱いていた保守や右派と呼ばれる一部の知識人を強く触発した。彼らは、「リベラルな国際秩序」を打破する世界観をトランプ氏の運動や政権中枢に浸透させようと試みた。 中でも、政権への人材供給などを組織的に進め、互いに連携しながら特に影響力を増した勢力がある。保守系シンクタンク「クレアモント研究所」と、イスラエルの政治哲学者ヨラム・ハゾニー氏だ。 米紙ニューヨーク・タイムズはクレアモントを「米国右派の神経中枢」と呼び、ハゾニー氏を「トランプとバンス(JD・バンス副大統領)の背後にこの男の運動がある」と評した。アウトサイダーから中枢へ 首都ワシントンには、共和党系から民主党系まで著名なシンクタンクが並び、「政策の殿堂」としての権威を見せつける。 だが、クレアモントのトップが拠点とするテキサス事務所は、それとは対照的な、ダラス近郊の目立たない場所にあった。米国の郊外の町にありふれた、商店やクリニックが入るような建物で、ここが「神経中枢」の一つとは誰も気付かないだろう。 「共和党、民主党ともに支配階級が同じような思考にとらわれていた中、トランプ氏だけが、そのシステムに衝撃を与えることのできる真のアウトサイダーだった」 昨年末、取材に応じたライア…この記事は有料記事です。残り2974文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人青山直篤アメリカ総局員専門・関心分野米国、国際政治・経済、日米関係、近代史関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする