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世界3大映画祭で最も歴史がある第83回ベネチア国際映画祭が、2日夜(日本時間3日未明)開幕しました。 最高賞の金獅子賞を競う「長編コンペティション部門」には、是枝裕和、塚本晋也の日本人監督2人の作品が出品されるほか、著名監督らの作品を特別上映する「アウト・オブ・コンペ部門」にも三池崇史監督、SABU監督の作品が出品されます。 注目の映画祭の模様を、授賞式がある12日夜(日本時間13日未明)まで、現地からタイムラインでお伝えします。※表示は現地時間ベネチア映画祭が開幕、注目の日本作品は 見どころと歴史を解説【まとめてわかる】7日22:00爆笑誘った「Arrested Memory」 アウト・オブ・コンペティション部門に選ばれているSABU監督の「Arrested Memory」が7日夜(日本時間8日未明)、メイン会場サラ・グランデで公式上映された。何度も爆笑が起こり、SABU監督は「してやったりですよ」。 台湾のトップスター、イーサン・ルアンを主役に迎え、台湾で撮影したコメディー。大がかりな麻薬取引の捜査現場で大惨事を起こし、あまりのショックから記憶障害を発症した刑事が主人公。堤真一演じる裕福な日本人の息子が誘拐され、主人公は身代金を渡す役を担うが、犯人の指示する場所に向かう途中で、自分がいま何をしているのか、バッグに入っている大量の現金は何なのか、忘れてしまう。 刑事が直感で暴走し、部下が収拾のため奔走し、犯人側も振り回される。SABU監督らしい息もつかせぬノンストップの87分だ。あり得ない偶然が重なり、先の読めない展開が続くが、最後は痛快、ちょっとハートウォーミング。 上映終了後に日本メディアの取材を受けたSABU監督は「お客さんの反応が良く、盛り上がってすごいハッピーです」。 誘拐と身代金の受け渡し部分は黒澤明監督の名作「天国と地獄」を下敷きにしている。「好きな作品なのでちょっとパロってみようかな、と思って脚本を書いた。初めの方だけですけどね」 「天国と地獄」の三船敏郎にあたるのが、堤の役どころ。堤の初主演映画「弾丸ランナー」(1996年)はSABU監督の長編デビュー作で、盟友と言える関係だ。かなりドスをきかせた芝居を見せる本作の堤に「あそこまで昭和っぽくやらなくても」と苦笑しつつ、「別に不正解ではない。良かったですよ」と話した。 日本公開は来年の予定。7日17:00満員の観客、12分のスタンディングオベーション【動画】最新作「ルックバック」が公式上映され、観客からスタンディングオベーションを受ける是枝裕和監督ら=小原篤撮影 1千席超のメイン会場サラ・グランデで7日夕(日本時間8日未明)、コンペティション部門に選ばれている是枝裕和監督の「ルックバック」が公式上映された。 マンガ家を目指す2人の少女、藤野と京本の友情と成長の物語。藤野役の出口夏希、京本役の蒔田彩珠(あじゅ)、それぞれの子ども時代を演じた七瀬ふうりと岡田六花(ろっか)が、是枝監督と共にレッドカーペットを歩き、客席で上映を見届けた。 終了後には、満員の観客から約12分に及ぶスタンディングオベーションが送られた。5人は立ち上がって繰り返しお辞儀をし、手を振って熱い歓声にこたえた。肩を組んでポーズをとる姿も見られた。出口は感極まった様子で何度も目元をぬぐい、最後は、是枝監督が大きく両手を振って会場をあとにした。是枝監督が追求したペンの〝音〟 「ルックバック」実写だからこそベネチアこぼれ話女優賞の有力候補か 「ワイルド・ホース・ナイン」のジョン・マルコビッチが男優賞の有力候補なら、女優賞の有力候補は「ウーマン・アンノウン」のマティルデ・アーセルだ。 6日夜(日本時間7日未明)に公式上映されたコンペティション部門選出作品「ウーマン・アンノウン」(メイ・エルトーキー監督)は、ナチスの占領からの解放という形で戦争が終わった直後のデンマークが舞台。裕福な家の住み込みメイド兼乳母として働くマリーはその家の主人クリスチャンと婚約しているが、戦時中にドイツ兵と親密な関係にあったという秘密を抱えていた。露見すれば、将来の女主人の地位だけでなく職も失い、更には、愛国心に燃え上がった男たちの手により「裏切り者」として公衆の前で髪を切られるといったリンチに遭う恐れがある。過去を知る文無しの青年カールと外出中に鉢合わせし、家を知られた彼女は窮地に陥る――。 路上のリンチ現場で、婦人科の診察室で、仕立屋で、夜ごとのベッドの上で、子どもの遊びの中で、女性の体が男性たちによっていかに支配されるかを映画は繰り返し描く。主体的に生きることは許されず、求められるのは従順で貞淑であること。 過去を振り払い〝上昇婚〟へ踏み出そうとするも抑圧が強まっていくマリーを、アーセルが非常に抑制された演技で見せる。終始こわばった表情でピリピリと緊張感を放ち、画面を支配する。ふとした瞬間に瞳に差す絶望の光。自分が自分でいられる場所はどこにもないのだと悟るあきらめの表情。圧巻だった。ベネチアこぼれ話星取表はマーティン・マクドナー監督作品がリード 21作が選ばれたコンペティション部門は1日2、3作のペースで上映されていく。4日までに公式上映された5作のうち、最も評価が高いのはマーティン・マクドナー監督の「ワイルド・ホース・ナイン」だ(来年日本公開の予定)。 地元誌が会場で配布する日報「DAILY」の星取表で、塚本晋也監督の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」などを抑え〝独走〟している。記者も見たが「これでもし審査員が賞を何もあげなかったらどうかしている」というくらいの素晴らしさだ。 1973年、軍事クーデター直前のチリが舞台。CIA(米中央情報局)で長年汚れ仕事をこなしてきたベテラン工作員クリス(ジョン・マルコビッチ)が、後輩のリー(サム・ロックウェル)とイースター島を訪れる。クリスは空港で出会った左派の女子学生にクーデター計画をぺらぺらしゃべり、島で回顧録の執筆に取り組むがなぜか出だしは恐竜の話。奇行老人のとぼけた珍道中に見えるが、クリスにもリーにも裏があって――という物語。 何よりもマルコビッチだ。キャリア最高の演技だろう。悲哀とユーモアを軽やかに行き来しながら、闇を抱えたすごみと人生の重みを見せる。振り回されながらついていくロックウェルの受けの芝居も面白く、最後にはおいしいところをもっていく。オフビートなコメディーに見せておいて、巧妙に数々の伏線を隠しておくマクドナーの脚本も見事。テーマは「人生の最後に人は何をなすべきか?」。 星五つを最高とする星取表は、イタリア国内の批評家が参加するものと国外の批評家が参加するものと2種あり、「ワイルド・ホース・ナイン」はその両方で唯一、平均点が4点台に達している。マクドナーはベネチアで過去、「スリー・ビルボード」「イニシェリン島の精霊」で脚本賞を獲得。今回は金獅子賞か、銀獅子賞(審査員大賞または監督賞)は欲しいところだろう。コンペ全作を見ないと分からないが、マルコビッチの男優賞は最有力候補では。4日19:30塚本監督「ベネチアは第二の故郷」 コンペティション部門に出品している塚本晋也監督の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」が4日夜(日本時間5日未明)、1千席超のメイン劇場であるサラ・グランデで公式上映された。 元米海兵隊のベトナム帰還兵が戦場のトラウマと加害の罪に向き合う物語。主人公ネルソンを演じたロドニー・ヒックスさんとネルソンの治療に当たる精神科医ダニエルズ役のジェフリー・ラッシュさんを伴ってレッドカーペットを歩いた塚本監督は、歓声を送る人たちに手を振って笑顔でこたえた。 終映後、満員の観客が立ち上がって拍手を送ると、塚本監督は手に持った花を掲げ感謝の意を表し、何度もお辞儀。ヒックスさんと肩を抱き合い喜びを分かち合う場面も見られた。 塚本監督は8度目のベネチアで、コンペ選出も4度目と、ベネチアに愛されている。公式上映後、日本メディアによる囲み会見に応じた塚本監督は、「長いつきあいのベネチアは第二の故郷。温かい雰囲気の中で上映でき、いつもながらにうれしい」と話した。【動画】「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」の公式上映後にスタンディングオベーションにこたえる塚本晋也監督=小原篤撮影【動画】公式記者会見終了後、各国の記者たちからサインを求められる塚本晋也監督=小原篤撮影塚本監督インタビュー 「戦争のヒロイズム」危惧、「生きて帰っても加害者として苦しみが続く」3日21:00相撲の光と影を描いたドキュメンタリー上映 「ベネチア・スポットライト部門」で、日系アメリカ人のエリック・シライ監督の「SUMO 魂を鍛え抜く」(日米など4カ国の共同製作)が公式上映された。 大相撲のドキュメンタリーで、境川部屋の激しい稽古や力士の日常、体の小さい新弟子の苦労と奮闘、横綱照ノ富士(現伊勢ケ浜親方)がひざの手術からの再起を語るインタビューなどで構成。体を酷使する力士の健康や短命とされる問題など、影の部分にも光を当てた。3日16:00和傘で見得切る伊達男 イタリアで開催中の第83回ベネチア国際映画祭で3日午後(日本時間深夜)、歌舞伎俳優の市川團十郎(だんじゅうろう)さんがメイン会場パラッツォ・デル・シネマ前のレッドカーペットを、歌舞伎の演目の一つ「男伊達花廓(おとこだてはなのよしわら)」の衣装で歩いた。【動画】レッドカーペットを歌舞伎の演目の一つ「男伊達花廓」の衣装で歩く歌舞伎俳優の市川團十郎さん=K2ピクチャーズ提供 注目作や話題作を集めたアウ…






