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世界3大映画祭で最も歴史がある第83回ベネチア国際映画祭が、2日夜(日本時間3日未明)開幕しました。 最高賞の金獅子賞を競う「長編コンペティション部門」には、是枝裕和、塚本晋也の日本人監督2人の作品が出品されるほか、著名監督らの作品を特別上映する「アウト・オブ・コンペ部門」にも三池崇史監督、SABU監督の作品が出品されます。 注目の映画祭の模様を、授賞式がある12日夜(日本時間13日未明)まで、現地からタイムラインでお伝えします。※表示は現地時間ベネチア映画祭が開幕、注目の日本作品は 見どころと歴史を解説【まとめてわかる】12日21:00主演のマティルデ・アーセルは女優賞も イタリアで開かれた第83回ベネチア国際映画祭は12日夜(日本時間13日未明)、コンペティション部門最高賞の金獅子賞に、メイ・エルトーキー監督の「ウーマン・アンノウン」(デンマーク・スウェーデンなど合作)を選び閉幕した。ナチスドイツの占領が終わったばかりのデンマークで、ドイツ兵と親密だった関係を隠して生きる女性の物語。主演のマティルデ・アーセルは女優賞も獲得した。 是枝裕和監督の「ルックバック」と塚本晋也監督の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」は賞を逃した。 他の主な賞は次の通り。 銀獅子賞(審査員大賞)=「もしもの愛」(イ・チャンドン監督)▽銀獅子賞(監督賞)=イリヤ・フルジャノフスキー(「ダウ」)▽審査員特別賞=「ナザ」(ユバル・アブラハム、ラヘル・ショール監督)▽脚本賞=ステファヌ・ブリゼ、コラリー・アメデオ、オリビエ・ゴルス(「ア・グッド・リトル・ソルジャー」)▽男優賞=ジョン・マルコビッチ(「ワイルド・ホース・ナイン」)ベネチアこぼれ話ガザのドキュメンタリーが高評価 映画祭はきょうが授賞式。21作がコンペティション部門で金獅子賞を競う。10日までに公式上映された19本について、地元誌が会場で配布する日報「DAILY」の星取表(5点満点)を紹介する。 イタリア国内の批評家が参加するものと国外の批評家が参加するものの2種あり、「国内」ではマーティン・マクドナー監督の「ワイルド・ホース・ナイン」が平均4.30点で首位、是枝裕和監督の「ルックバック」が3.90点で2位につけている。 「国外」では、10日に公式上映されたユバル・アブラハムとラヘル・ショール監督による「ナザ」が4.56点で首位に躍り出た。イ・チャンドン監督の「もしもの愛」が4.55点、「ワイルド・ホース・ナイン」が4.15点で続く。「ルックバック」は3.22点で中位にとどまる。塚本晋也監督の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」は「国内」2.92点、「国外」2.67点であまり振るわない。ちなみに「ナザ」は「国内」でも3.87点と好位置につけている。 「ワイルド・ホース・ナイン」は映画祭序盤にこのタイムラインで紹介した通り、CIA(米中央情報局)のベテラン工作員クリス(ジョン・マルコビッチ)がイースター島を旅する中で「人生の最後に何をなすべきか」を見つめる物語だ。 「ナザ」は、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザで「巻き添え」を計算の上でシステマティックに民間人を殺害していたことを告発するドキュメンタリー。英ガーディアン紙の報道に基づくもので、この映画の製作もしたガーディアン紙は、公式上映で25分ものスタンディングオベーションを受けたと報じた。 さて、米の俳優で監督のマギー・ギレンホールを長とする審査員たちの評価は? 結果は午後7時(日本時間13日午前2時)に始まる授賞式で発表される。11日14:00ひねりが利いた鈴木清順のドキュメンタリー アウト・オブ・コンペティション部門で11日に上映された「ツイスト&シュート ミスター・スズキ」は、2017年に死去した映画監督・鈴木清順の世界を探る仏のドキュメンタリー。かつて監督が所属し今回の制作に協力した日活によると、この鬼才を主題とした初の長編ドキュメンタリーだという。それが仏で作られイタリアのベネチアで上映されたというのは、けれんに満ちた「清順美学」が世界的に愛されていることを表している。 過去に宮崎駿、北野武、ミヒャエル・ハネケ、ギレルモ・デル・トロといった監督たちのドキュメンタリーを手掛けたイブ・モンマユール監督による本作では、映画監督のジョン・ウーや写真家で映画監督の蜷川実花らが清順作品から受けた影響を語り、四方田犬彦ら評論家が作品の魅力と特徴を解説するほか、作品の背景となる闇市など戦後日本の社会や風俗にもきちっと目配りし、手堅い作りでよくまとまっている。 重点を置く清順作品は1964年の「肉体の門」、65年の「春婦伝」、66年の「東京流れ者」「けんかえれじい」、67年の「殺しの烙印(らくいん)」。何と、清順が日活を離れ新たな世界を切り開いた80年の「ツィゴイネルワイゼン」は終盤でタイトルに触れただけで93分の映画は終了。「その後もいろいろ撮っているのにスルー?!」と驚いた。 モンマユール監督は、ギラギラしたエネルギーとわいざつなパワーに満ちた初期作品がお気に入りなのだろう。耽美(たんび)でアートな薫り高い「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎(かげろう)座」「夢二」の「浪漫三部作」を中心に構成するのだろうという予想は見事に裏切られた。清順映画に負けずツイスト(ひねり)が利いている。 日本公開は未定。ベネチアこぼれ話会期中はホテルと会場の往復 ベネチア、ベルリン、カンヌの世界3大映画祭を取材してきたが、記者の最大のミッションは、二十数本あるコンペティション部門の作品を10日間程度の会期中に全て見ること。日本作品がコンペに入っていれば、公式記者会見を取材し、公式上映に立ち会い、上映後に日本の記者向けに開かれるミニ会見にも出て、格段に仕事が増える。 その上で、コンペ以外の部門の日本作品も取材するし、日本や日本人を題材とした海外作品も、映画祭を振り返るリポートを書くために可能な限り見ておきたい。というわけで、会期中はほとんどホテルと会場を往復するばかりとなる。 記者の泊まるホテルはベネチア最大の観光スポットであるサン・マルコ広場裏手にあり、映画祭会場のリド島へは水上バスで渡る。潮風を顔に受け船に揺られて約20分、リド島の船着き場からは会場を結ぶシャトルバスが走っている。ホテルを出て大体45分で会場に到着する。【動画】映画祭が開かれているイタリア・ベネチア=小原篤撮影 一番忙しかった9月7日のスケジュールをご紹介しよう。 朝の7時(日本時間14時)に起床し、PCを起動して8日付の朝刊の文化面のゲラをチェック。コンペ参加の2作、「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」の塚本晋也監督と「ルックバック」の是枝裕和監督のインタビューが並んで載っている。校閲担当者の指摘などを受けて、手直し。 デジタル版で日報のような形で更新しているこの「ベネチア映画祭 タイムライン」もチェック。前夜に書いた「女優賞の有力候補か」という記事が無事「ベネチアこぼれ話」として載っている。 この日最初に見るのは11時から上映のコンペ作品「ザ・スパイラル」。一般客向けではなく、記者か映画関連の仕事をしている人たち(つまり映画祭パスの保持者)のための上映だ。身支度を整え9時45分にホテルを出発。水上バスには、首からパスをぶら下げた仲間が続々と乗ってくる。 メイン会場パラッツォ・デル・シネマ内で「ザ・スパイラル」を見終えると「ルックバック」公式記者会見まで10分足らず。急いで隣の建物パラッツォ・デル・カジノの会見場に駆け込む。質疑応答を取材し、会見終了後サイン攻めにあう是枝監督らをスマホで動画撮影。 13時半に会見終了、今度は10分ほど歩いた別会場で14時からコンペ作品「もしもの愛」を見る(これはパス保持者も一般客も入れる)。2時間44分と長い。 17時から「ルックバック」公式上映。エンドロールが始まると12分間に及ぶ熱いスタンディングオベーションがわき起こった。是枝監督と出演者らの笑顔と涙を、まずスマホで動画撮影、それから一眼レフで写真を撮る。 19時過ぎにパラッツォ・デル・カジノにある広くて快適な記者室へ。タイムライン用の記事はノートに書いてまとめる(こういうアナログ作業も好き)。スマホで打ってメールで映画担当デスクに渡す。翌日、動画付きで「満員の観客、12分のスタンディングオベーション」という見出しでタイムラインに載った。 小一時間ほど休憩し、22時から再びパラッツォ・デル・シネマでアウト・オブ・コンペ部門に選ばれているSABU監督の「Arrested Memory」の公式上映を見る。このくらい遅い時間からの上映はベネチアでは普通のこと。しかもなぜかスタートが20分も遅れた。観客は大爆笑。終映後は歩いて10分ほどのレストランで日本の記者向け会見。日付が変わる。SABU監督の喜びの声を取材し終え、通りに出ると路線バスが来た。 船着き場に着いたらちょうどサン・マルコ広場に向かう水上バスが来ていた。これはラッキー。1時半前にホテルに戻れた。「ルックバック」スタンディングオベーションの写真をPCでチェックし出稿する。SABU監督の会見は次のタイムラインのネタに回すことにしよう。 仕事が終わればお風呂。リド島の大きなスーパーで買っておいたビール、ワイン、チキンのグリル、チーズ、リンゴ、日本から持ってきたスープ春雨などでひとり酒盛りを楽しみ、午前2時45分ごろに就寝。朝8時半からコンペ作「バンカー」の上映があるので、睡眠は4時間、朝食は抜き(このホテルの朝食は7時半スタート)。夜に3時間半の超大作の上映があるから、ホテルに戻れるのは23時過ぎかな……。7日22:00爆笑誘った「Arrested Memory」 アウト・オブ・コンペティション部門に選ばれているSABU監督の「Arrested Memory」が7日夜(日本時間8日未明)、メイン会場サラ・グランデで公式上映された。何度も爆笑が起こり、SABU監督は「してやったりですよ」。 台湾のトップスター、イーサン・ルアンを主役に迎え、台湾で撮影したコメディー。大がかりな麻薬取引の捜査現場で大惨事を起こし、あまりのショックから記憶障害を発症した刑事が主人公。堤真一演じる裕福な日本人の息子が誘拐され、主人公は身代金を渡す役を担うが、犯人の指示する場所に向かう途中で、自分がいま何をしているのか、バッグに入っている大量の現金は何なのか、忘れてしまう。 刑事が直感で暴走し、部下が収拾のため奔走し、犯人側も振り回される。SABU監督らしい息もつかせぬノンストップの87分だ。あり得ない偶然が重なり、先の読めない展開が続くが、最後は痛快、ちょっとハートウォーミング。 上映終了後に日本メディアの取材を受けたSABU監督は「お客さんの反応が良く、盛り上がってすごいハッピーです」。 誘拐と身代金の受け渡し部分は黒澤明監督の名作「天国と地獄」を下敷きにしている。「好きな作品なのでちょっとパロってみようかな、と思って脚本を書いた。初めの方だけですけどね」 「天国と地獄」の三船敏郎にあたるのが、堤の役どころ。堤の初主演映画「弾丸ランナー」(1996年)はSABU監督の長編デビュー作で、盟友と言える関係だ。かなりドスをきかせた芝居を見せる本作の堤に「あそこまで昭和っぽくやらなくても」と苦笑しつつ、「別に不正解ではない。良かったですよ」と話した。 日本公開は来年の予定。7日17:00満員の観客、12分のスタンディングオベーション【動画】最新作「ルックバック」が公式上映され、観客からスタンディングオベーションを受ける是枝裕和監督ら=小原篤撮影 1千席超のメイン会場サラ・グランデで7日夕(日本時間8日未明)、コンペティション部門に選ばれている是枝裕和監督の「ルックバック」が公式上映された。 マンガ家を目指す2人の少女、藤野と京本の友情と成長の物語。藤野役の出口夏希、京本役の蒔田彩珠(あじゅ)、それぞれの子ども時代を演じた七瀬ふうりと岡田六花(ろっか)が、是枝監督と共にレッドカーペットを歩き、客席で上映を見届けた。 終了後には、満員の観客から約12分に及ぶスタンディングオベーションが送られた。5人は立ち上がって繰り返しお辞儀をし、手を振って熱い歓声にこたえた。肩を組んでポーズをとる姿も見られた。出口は感極まった様子で何度も目元をぬぐい、最後は、是枝監督が大きく両手を振って会場をあとにした。是枝監督が追求したペンの〝音〟 「ルックバック」実写だからこそベネチアこぼれ話女優賞の有力候補か 「ワイルド・ホース・ナイン」のジョン・マルコビッチが男優賞の有力候補なら、女優賞の有力候補は「ウーマン・アンノウン」のマティルデ・アーセルだ。 6日夜(日本時間7日未明)に公式上映されたコンペティション部門選出作品「ウーマン・アンノウン」(メイ・エルトーキー監督)は、ナチスの占領からの解放という形で戦争が終わった直後のデンマークが舞台。裕福な家の住み込みメイド兼乳母として働くマリーはその家の主人クリスチャンと婚約しているが、戦時中にドイツ兵と親密な関係にあったという秘密を抱えていた。露見すれば、将来の女主人の地位だけでなく職も失い、更には、愛国心に燃え上がった男たちの手により「裏切り者」として公衆の前で髪を切られるといったリンチに遭う恐れがある。過去を知る文無しの青年カールと外出中に鉢合わせし、家を知られた彼女は窮地に陥る――。 路上のリンチ現場で、婦人科の診察室で、仕立屋で、夜ごとのベッドの上で、子どもの遊びの中で、女性の体が男性たちによっていかに支配されるかを映画は繰り返し描く。主体的に生きることは許されず、求められるのは従順で貞淑であること。 過去を振り払い〝上昇婚〟へ踏み出そうとするも抑圧が強まっていくマリーを、アーセルが非常に抑制された演技で見せる。終始こわばった表情でピリピリと緊張感を放ち、画面を支配する。ふとした瞬間に瞳に差す絶望の光。自分が自分でいられる場所はどこにもないのだと悟るあきらめの表情。圧巻だった。ベネチアこぼれ話星取表はマーティン・マクドナー監督作品がリード 21作が選ばれたコンペティション部門は1日2、3作のペースで上映されていく。4日までに公式上映された5作のうち、最も評価が高いのはマーティン・マクドナー監督の「ワイルド・ホース・ナイン」だ(来年日本公開の予定)。 地元誌が会場で配布する日報「DAILY」の星取表で、塚本晋也監督の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」などを抑え〝独走〟している。記者も見たが「これでもし審査員が賞を何もあげなかったらどうかしている」というくらいの素晴らしさだ。 1973年、軍事クーデター直前のチリが舞台。CIA(米中央情報局)で長年汚れ仕事をこなしてきたベテラン工作員クリス(ジョン・マルコビッチ)が、後輩のリー(サム・ロックウェル)とイースター島を訪れる。クリスは空港で出会った左派の女子学生にクーデター計画をぺらぺらしゃべり、島で回顧録の執筆に取り組むがなぜか出だしは恐竜の話。奇行老人のとぼけた珍道中に見えるが、クリスにもリーにも裏があって――という物語。 何よりもマルコビッチだ。キャリア最高の演技だろう。悲哀とユーモアを軽やかに行き来しながら、闇を抱えたすごみと人生の重みを見せる。振り回されながらついていくロックウェルの受けの芝居も面白く、最後にはおいしいところをもっていく。オフビートなコメディーに見せておいて、巧妙に数々の伏線を隠しておくマクドナーの脚本も見事。テーマは「人生の最後に人は何をなすべきか?」。 星五つを最高とする星取表は、イタリア国内の批評家が参加するものと国外の批評家が参加するものと2種あり、「ワイルド・ホース・ナイン」はその両方で唯一、平均点が4点台に達している。マクドナーはベネチアで過去、「スリー・ビルボード」「イニシェリン島の精霊」で脚本賞を獲得。今回は金獅子賞か、銀獅子賞(審査員大賞または監督賞)は欲しいところだろう。コンペ全作を見ないと分からないが、マルコビッチの男優賞は最有力候補では。4日19:30塚本監督「ベネチアは第二の故郷」 コンペティション部門に出品している塚本晋也監督の「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」が4日夜(日本時間5日未明)、1千席超のメイン劇場であるサラ・グランデで公式上映された。 元米海兵隊のベトナム帰還兵が戦場のトラウマと加害の罪に向き合う物語。主人公ネルソンを演じたロドニー・ヒックスさんとネルソンの治療に当たる精神科医ダニエルズ役のジェフリー・ラッシュさんを伴ってレッドカーペットを歩いた塚本監督は、歓声を送る人たちに手を振って笑顔でこたえた。 終映後、満員の観客が立ち上がって拍手を送ると、塚本監督は手に持った花を掲げ感謝の意を表し、何度もお辞儀。ヒックスさんと肩を抱き合い喜びを分かち合う場面も見られた。 塚本監督は8度目のベネチアで、コンペ選出も4度目と、ベネチアに愛されている。公式上映後、日本メディアによる囲み会見に応じた塚本監督は、「長いつきあいのベネチアは第二の故郷。温かい雰囲気の中で上映でき、いつもながらにうれしい」と話した。【動画】「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」の公式上映後にスタンディングオベーションにこたえる塚本晋也監督=小原篤撮影【動画】公式記者会見終了後、各国の記者たちからサインを求められる塚本晋也監督=小原篤撮影塚本監督インタビュー 「戦争のヒロイズム」危惧、「生きて帰っても加害者として苦しみが続く」3日21:00相撲の光と影を描いたドキュメンタリー上映 「ベネチア・スポットライト部門」で、日系アメリカ人のエリック・シライ監督の「SUMO 魂を鍛え抜く」(日米など4カ国の共同製作)が公式上映された。 大相撲のドキュメンタリーで、境川部屋の激しい稽古や力士の日常、体の小さい新弟子の苦労と奮闘、横綱照ノ富士(現伊勢ケ浜親方)がひざの手術からの再起を語るインタビューなどで構成。体を酷使する力士の健康や短命とされる問題など、影の部分にも光を当てた。■和傘で見得切る伊達男[3日…






