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台湾有事は日本にとっての有事なのか。日本の外交力はどうなっているのか。憲法9条は守れるのか。私たちには何ができるのか――。読者の方々から寄せられた92件の質問に、外交・安全保障を長年取材してきた編集委員の園田耕司記者が向き合いました。台湾有事から、私たち市民が取ることができる行動まで、五つのテーマで整理しました。※本記事は、ポッドキャストエピソード「(Q&A)戦争の時代、日本の平和はどうなる 読者から92の質問、編集委員の答えは」の音源を生成AIで文字起こしし、音声チームと出演者が確認・校正したうえで公開しています。<園田耕司記者:朝日新聞編集委員(外交・安全保障担当)。2000年に朝日新聞入社。2007年から政治部で自民党、防衛省、外務省などを担当。2018~22年、ワシントン特派員として第1次トランプ政権、バイデン政権を取材>中国は台湾に侵攻するの?そのとき日本は「台湾有事」という言葉をニュースで目にする機会が増えました。読者の方々からも、台湾で米中の戦争が起きる可能性は高いのか、台湾は独立しているのか、中国が台湾にこだわる理由は何かなど、複数の質問が届きました。中でも多くの人が気にしていたのは、中国が台湾に侵攻した場合、なぜ日本が関わることになるのか、という問いです。――中国が台湾に侵攻することがあったとしても、なぜそれが日本にとっての有事になるのでしょうか。園田記者は、まず台湾有事の意味を説明しました。「有事」は日本語独特の表現で、英語ではずばり「中国による台湾侵攻(A Chinese invasion of Taiwan)」などといいます。そのうえで、台湾有事と日本有事との関係をこう述べました。「中国が仮に台湾に侵攻する事態を考えると、台湾を助けに行く米軍がどこにいるかと言えば、日本国内にいる。日本の在日米軍基地から台湾周辺に向けて出撃する可能性が高い」このため、本格的な台湾侵攻を行う際、中国が日本国内の在日米軍基地をミサイル攻撃する可能性があると、日米の専門家らはみていると指摘します。その場合、在日米軍基地への攻撃は同時に日本への攻撃になるため、日本が武力攻撃事態と認定し、中国側と交戦状態に入る可能性があると語ります。「台湾有事と日本有事が密接に関係しているというのは、こうした考え方から来ている」と話します。ただし、園田記者は、仮に在日米軍基地が攻撃された場合、日本と中国が交戦状態に入るかどうかは、必ず日本側の政策的な判断もあると説明します。「例えば1発だけミサイルで攻撃されたからといって、すぐさま中国と交戦状態に入るかというと微妙な話だ。存立危機事態の認定も、自動的に決まるわけではなく、常に(自衛隊の最高指揮官である)首相の判断が入ってくる」では、中国は本当に台湾に侵攻するのでしょうか。園田記者は、米国家中央情報局(CIA)が「中国の習近平国家主席が中国軍に対し、2027年までに台湾侵攻の準備を整えるように指示を出した」と分析したことに触れつつも、実際に侵攻することが決まったわけではないと注意を促します。現在の中国国内の経済成長低迷や台湾侵攻による国際的孤立のリスクを考えれば「そう簡単ではない」としつつ、「全ては習氏の判断による」と述べました。最も有力なシナリオとして挙げたのは、着上陸作戦ではなく、台湾に対する「海上封鎖」を行うことでした。海上封鎖は国際法において武力行使の一つとされ、中国軍が艦艇や航空機を派遣して台湾をぐるりと取り囲んで経済的に封鎖するものです。この場合、米軍が中国側から直接攻撃を受けていなければ、米国が実際に軍事介入するかどうかは判断が難しくなると園田記者はみています。中国国民の反応についても質問がありました。中国とビジネスをしてきた人からは「西側とつながりたい人が多い。国内でも反発があるのでは」という声が寄せられています。園田記者は、米国の大学院で中国人研究者と交流した経験を振り返り、「(中国の人々は)個人としてはいろんな意見があるだろう」としつつも、「中国は権威主義国家であるため、多様な個人の意見が政策に反映されるのは難しい」と話しています。台湾有事「ステージゼロ」 データと衛星画像が可視化する中国の試み日本の外交カードは?「選択の幅、どんどん小さく」軍事的な緊張が高まる中で、外交や国際機関に何ができるのか。読者の方々からは、日本の外交力の現状、戦争の仲介役を担えないのか、国際法は無力なのか、国連改革の糸口はあるのかなど、多角的な問いが寄せられました。――日本の外交力の現状はどうなっているのでしょうか。園田記者は「日本は非常に難しい立ち位置にある」と話します。日本は米中の覇権争いの中で米側に立っているうえ、尖閣諸島などをめぐる日中対立で対米依存を強めており、「外交的な選択の幅がどんどん小さくなっている」のが現状だといいます。ある国の外交官が「この時代に外交官をやっているのはとてもつらい」と語ったエピソードを紹介し、園田記者はこの外交官の言葉の背景を次のように解説します。「(外交交渉の前に)いきなり爆弾を落としてしまう。爆弾を落とした後に外交の力で回復するというのはなかなか難しい。このように『法の支配』が弱まり、『力の支配』が横行する国際社会になると、外交の力は非常に弱まってしまう」では、日本に「外交カード」はあるのか。園田記者が挙げたのは、東南アジア諸国からの信頼です。戦後、日本は東南アジアの開発支援を含めて良好な関係を築いてきた実績があり、「非軍事分野における日本の貢献に対する信頼は一つのアセット(資産)だ」と指摘します。国際法や国際機関の機能についても、複数の質問がありました。ロシアは法的に裁けないのか、国際裁判所に強制力はあるのか、という問いに対して、園田記者は「とくに大国に対し、国際機関の強制力は非常に弱くなっている」と認めます。「大国が国際法を守る姿勢を持たなければ、国際機関が機能するのは難しい」一方、国際法が重要である理由をこう説明します。「力が全ての『ジャングル化した国際社会』をつくらないためだ。国際法によって大きなメリットを得るのは、私たち中小規模国家だ。国際法のルールを無視する大国に対し、中小規模国家がきちんと結集し、『法の支配』を回復させる運動を展開していくことが重要になる」カナダのカーニー首相が「中堅国家(ミドルパワー)の団結」を呼びかけた例を挙げ、日本にもそうした役割がありうると示唆しています。【そもそも解説】戦後の国際秩序とは? なぜ米国は壊そうとするのか「永世中立国」を目指すべきだという質問もありました。園田記者は「全く非現実的な提案とは断言しない」と前置きしつつ、永世中立国は徴兵制が必要になる可能性が高く、米国の「核の傘」も在日米軍基地もない状態で一国だけで守る体制を整えられるかどうかが問われる、と説明します。そのうえで、「日中同盟」という選択肢も理論上は存在するが、権威主義国家と民主主義国家が信頼に基づく軍事同盟を結べるかは「なかなか難しい」との見方を示しました。「いろんな選択肢を本当は議論するべきだと思う。その上で、『やはり日米同盟しかない』となれば、日米同盟を選ぶべきだし、『永世中立国でも良いではないか』となれば永世中立国を選ぶ。日本はいろんな選択肢を持っていると思う」日本の軍事力、世界7位だが…日本の防衛力は十分なのか。自衛隊の実力は世界でどの程度なのか。抑止力は本当に機能するのか。防衛に関する質問も多く寄せられました。園田記者によると、日本の軍事力は国際的指標のもとで世界7位とされ、「かなり高い」といいます。とくに海上自衛隊の潜水艦や機雷の掃海能力は国際的に高く評価されているとのことです。ただし、日本は空母、戦略爆撃機、弾道ミサイルなどの攻撃兵器を持たないため、「中国やロシアと比べれば攻撃力は弱い」と指摘します。これは憲法9条に基づく「専守防衛」の方針に基づくもので、日本の安全保障をめぐっては、日本に欠けていた攻撃能力を在日米軍が補ってきた構造があったと説明します。――そもそも「必要な防衛力」とはどういう状態を指すのでしょうか。園田記者は「ここまでなら大丈夫という基準はない」と述べ、相手国の軍備態勢に応じ、自国の防衛力も変わる相対的なものだと説明します。現在は、世界的に各国が軍備を拡大する「再軍備時代」に入ったといわれると指摘し、その背景にはロシアのウクライナ侵攻や米国の外交安保政策の不安定化を挙げました。抑止力の議論では「攻めると痛い目に遭う」という抑止は理論的には事実だとしつつ、前提として「相手が正常かつ合理的な判断ができること」が必要だと説明します。拒否的抑止(攻めても成功しないと思わせる)と懲罰的抑止(攻めたら報復する)の2種類があると紹介したうえで、核抑止の有効性は「強まっている」という認識が現在広がっていると語りました。園田記者はその理由について、次のように説明しました。「ロシアがウクライナに侵攻した時、なぜ米国や北大西洋条約機構(NATO)が軍事介入しなかったかというと、一言で言えば、ロシアが核兵器を持っていたからだ」全てはE=mc2から始まった ロシアが繰り返す威嚇、核の脅威今もさらに、核開発を放棄したリビアのカダフィ政権がのちにNATOの空爆などを受けて政権崩壊した事例を挙げ、専制国家の指導者たちがカダフィ政権崩壊を教訓に核開発の意義を再認識している流れもあると指摘しました。日本が核兵器禁止条約に加盟しない理由としては、日本が米国の「核の傘」の下にいることや、核保有国の協力を得られていない条約だと日本政府は主張していることなどと説明しました。高市政権がめざすもの 非核三原則の見直しも高市政権が目指す国の姿がよく分からないという質問が寄せられました。憲法9条は堅持できるのか、非核三原則は守られるのかという問いも届いています。園田記者は、高市政権の方向性を「日本を『普通の国』にすること」と説明します。「戦後平和主義を脱し、攻撃力も持った普通の軍隊を持つ国にしたいと考えている。(占領期に形成された戦後体制という)『戦後レジーム』から脱却した国の形をつくっていくというのが(高市政権の)最終的なゴールだと思う」憲法9条については、条文そのものと実態には乖離(かいり)があることを認めつつも、日本の安保政策への憲法9条の影響は「非常に大きい」と園田記者はみています。「条文そのものと実態はかなり離れているように見えるが、憲法9条は(日本の安全保障政策に)非常に作用している。例えば、日本が空母や戦略爆撃機を持っていなかったりするのは、突き詰めれば、憲法9条の概念から来ているといって良い」同時に、憲法9条だけで日本の平和が守られてきたわけではないとも指摘します。日本の安全保障には、日米同盟において「矛」の役割を担ってきた在日米軍や、米国の「核の傘」といった存在が、自衛隊の「専守防衛」を補完するという「複雑なメカニズム」があったと説明し、どちらか一方だけで語ることには偏りがあるとの考えを示しました。非核三原則の見直し、とくに「持ち込ませず」の撤廃が議論されていることについては、園田記者は「持ち込ませず」撤廃の実際の安全保障上の効果に疑問を示します。米軍はNCND政策(核兵器の有無を肯定も否定もしない方針)を続けており、たとえ日本が「持ち込ませず」を撤廃しても、米国のNCND政策に変化はないだろうとの見方を示しました。「(非核三原則の見直しには)むしろアジアの国々からの反発もあり、安全保障的にはプラスではないだろう」危うい日本の核保有論「北朝鮮になるのか」元外務次官薮中三十二さん安保3文書の改定については、防衛費が国内総生産(GDP)比2%からさらに3.5%程度への引き上げが水面下で米国から求められていると話し、人工知能(AI)やドローンなど「新しい戦い方」への対応が盛り込まれる見通しだと説明しています。自衛隊の担い手不足は深刻な問題だと園田記者は見ています。自衛隊の応募者数が減り続ける中、防衛省・自衛隊は省人化やAI活用を進めていますが、「それでも最終的に人が足りなくなる可能性は、『全くない』とは言い切れない」とも述べ、一部の欧州諸国では徴兵制が復活している動きに触れました。私たちは何ができる?二つの提案安全保障の議論が複雑すぎて、国民として何をすればよいか分からない。戦争や平和について職場や家族で話しにくい。そんな率直な悩みも届きました。――こんなモヤモヤを解消するにはどうしたらよいでしょうか。園田記者は「非常に共感できるご質問だ。私もモヤモヤしている」と応じつつ、「それぞれの個人がどのような安全保障政策が良いかという問題で意見が違ったとしても、必ず一致しているのは、『平和を維持したい』『平和を回復させたい』という願いだ」と述べ、私たち市民が日常生活でできることとして、次の二つを挙げました。一つ目は、相手の国への理解を深めることです。「相手に対する無理解が恐怖を呼び起こし、暴力が起きる。これは人種差別や外国人排斥もそうだが、相手の国の体制が違ったとしても、理解を深め、憎悪の芽を摘み取っていく作業は、私たち一人ひとりができることだと思う」米国の大学院で学んだ経験をもとに「権威主義国家であっても、個人はいろんな意見を持っている」と振り返り、国家と国民は違うという認識の大切さに言及しました。二つ目は、過去の戦争の歴史を忘れないことです。「悲惨な戦争の記憶が風化すれば、戦争を止めるべきだというブレーキも弱まってくる。特に8月は過去の戦争に対する鎮魂の時期でもある。各家庭でも、過去の戦争についてみんなで話をする機会を持つことが、平和につながるのではないか」「見た人はそこに怯えてほしい」火垂るの墓、意地悪なおばさんの真実 安全保障問題をめぐっては、明確に一つだけの解を見つけるのは難しいことです。けれども、問いを持ち続けること、相手を理解しようとすること、過去に学ぶこと――。園田記者が語った言葉の中に、私たち市民一人ひとりが自分の問題として安全保障問題を考えていくうえで足がかりとなるものがあるかもしれません。ニュースが身近になるメディア「withnews」https://www.asahi.com/withnewsTikTokアカウント:https://www.tiktok.com/@withnewsYouTubeアカウント:https://www.youtube.com/@withnewschannel






