2026年7月31日 14時00分伊藤宏樹印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする350冊の選書術に迫る!斎藤美奈子さん、本で47都道府県を案内「旅する文学」完結記念トーク

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47都道府県のご当地文学を紹介する連載「旅する文学」の完結を記念して、連載筆者で文芸評論家の斎藤美奈子さんが7月1日、東京・築地の朝日新聞東京本社で作家LIVEを開いた。4年超の連載を振り返り、執筆の裏話を明かした。連載「旅する文学」一覧ページはこちらから350作超、どう選んだ? 「旅する文学」は2022年4月から連載が始まった。47都道府県を順不同で取り上げ、舞台となった作品を紹介する企画。その土地に通底する地域性や人々の気質を作品群から見いだした。 連載のきっかけを、「企画、立案ともに斎藤です」と明かした。日本文学をただ読み返すのではなく「今までになかったようなことをしたいと思い、提案した」と振り返る。 4年余りの連載で取り上げた作品は350作を超える。どう選んだのかという質問が事前に寄せられていた。 斎藤さんは、まず、1回あたり20作ほどをリストアップした、と執筆までの流れを説明した。地域の歴史や景勝地、地場産業といった特徴がよく描かれているものを見極め、絞り込む。「実際に読むのは12~13作。そのあと6~7作に収めたいと思うと、本当に悩みます」。ひとつの県内での地域性にも目を配り、舞台が偏らないようにしたという。「何冊も読んでいくと、その県の特徴や作品の傾向がぼんやり見えてくるんです」 また、芥川賞や直木賞の受賞作、本屋大賞を受けたベストセラーは積極的に選んだ。「文学のプロである選考委員や読者が選んだ本。極めて民主的な本です」現地取材は例外 一方、下調べの段階で、作品数が足りないのでは、と懸念した県もあったという。たとえば徳島編(24年8月)では、急きょ現地取材に出向いた。そこで1917~20年のドイツ兵捕虜と住民との交流を描いた原田一美の児童文学『ドイツさん』や、賀川豊彦の自伝的小説『死線を越えて』が徳島という土地にとって重要な作品だと確信し、選書に加えた。「徳島は難しいかなと思ったけど、私たちが(土地や作品を)知っているかどうかが問題なんですよね」 ただし、執筆直前の現地取材は例外。新潟出身の斎藤さんは、元々西日本の地理に弱かったといい、小説を読んでも土地勘が働かず「ピンと来なかった」という。その代わり、20年ほど前から各地の「日本百名城」や国宝、重要文化財などの図鑑を手元にそろえ、年に10カ所ほど訪ねていた。実は連載開始前に47都道府県を「踏破」していたというのだ。 「以前は本当に地理音痴で、岡山と広島はどっちが西か迷い、四国4県の位置も自信がなかった」。時代小説は得意ではなかったが、「現地に行って読むと面白い。知っている城が出てきて、戦国期や江戸期に、この場所がどうだったのかがわかるようになった」と話した。舞台突き止めると、読み方変わる 作品を読み、舞台を特定する過程には苦労と発見があった。 岩手編(25年5月)で取り上げた井上ひさし『吉里吉里人(きりきりじん)』は、架空の村が独立を宣言する物語だ。東北本線を北上する列車に乗っていた作家が、突如、独立騒動に巻き込まれる。斎藤さんは舞台が岩手だと思いながら読んでいたが、作中にある駅名「赤壁」は実在せず、宮城県側にある「有壁」がモデルのようにも読みとれる。東北本線が通る宮城、岩手の県境付近は入り組んでいるうえ、何度精読してもどちらが舞台とは確定できず、「宮城と岩手の県境の架空の村」と記した。 愛媛編(26年2月)の片山恭一『世界の中心で、愛をさけぶ』では、真珠養殖が盛んなことや、主人公が入院した病院と城の位置関係、「石応(こくぼ)」という地名を手がかりに、モデルは宇和島市と読み取った。「舞台を突き止めると読み方が違ってくる。特定の土地を書くにあたって作家は現地に足を運び、調べて書いたことが改めてわかった。敬意を感じます」 連載は今冬、朝日新聞出版から書籍化される。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人伊藤宏樹文化部|読書面、出版担当専門・関心分野出版、文芸、子どもの本関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする