インタビューファストパスはタイパの暴走か? 「モモ」時間泥棒から逃れるすべは聞き手・石川智也印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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並ばず入れます――。追加料金を払って優先的に施設やサービスを利用できる「ファストパス」が、テーマパークや飲食店などで広がりつつある。便利で効率的と歓迎する人も多い一方で、貧富の差や権力と関わりなく順番を守るという行列の「平等性」が崩れると問題視する声も。 なぜ私たちは「待つこと」をこれほど嫌うようになったのか。なぜ時間は「買える」ものになったのか。社会学者の鳥越信吾さんによると、タイパ至上主義は私たちの社会に深く根を張った「時間観」を映し出しており、その行き着く先は「時間のニヒリズム」だという。それは、児童文学の名作「モモ」で描かれた世界観にも通じていた――。権力を持つ者は待たず、持たない者は待つ ――ファストパス導入が進む現象をどう見ていますか。 この問題は、公平かどうかという倫理的観点や、新たなビジネスモデルの可能性といった経済的視点から語られがちです。しかし、この現象は、私たちが「時間」というものをどのように捉え、どう向き合っているのかという本質的問題を映し出しています。 ――単に「お金で時間を節約する」というだけではない意味があると? まず、ファストパスで行列の順番を飛ばすことは、電車で特急料金を払って移動時間を短縮することとは、決定的な違いがあります。 特急に乗って普通列車より早く目的地に着いても、それによって別の誰かが損をするわけではありません。しかしファストパスの場合、同じラーメンを食べるのに、追加料金を払った人は先に入ることができ、払わない人は待たされる。店の席数は限られているので、誰かが順番を飛ばせば、後ろに並んでいる人の時間を直接的に奪っていることになります。 米国の社会学者バリー・シュワルツは「待ち時間の社会的配分は権力の社会的配分と相関する」と指摘しました。社長は待たず、従業員は待つ。患者は待ち、医者は待たない。生活保護申請者や難民・移民への行政の対応もそう。つまり、権力を持つ者は待たず、持たざる者は待たされる――。富裕層に有利なファストパスは、この不均衡を可視化し、さらに助長する仕組みと言えます。近代社会を覆った「抽象的な時間」 ――そもそもこの仕組みの前提には、待つこと、待たされることは完全にネガティブなものだという共通認識がありますね。 そうです。お金を払って待ち…この記事は有料記事です。残り3773文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人石川智也オピニオン編集部専門・関心分野リベラリズム、立憲主義、メディア学、ジャーナリズム論、原発関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする







