【社説】少数民族の抑圧、域外適用に懸念 中国の新たな民族法制2026年7月5日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●中国で「民族団結進歩促進法」が施行。少数民族の権利より国家統合を優先●標準中国語教育を義務づけ、「中華民族」としての一体性を推進。多様な民族文化を脅かしかねない●域外適用により、日本を含む国外での中国批判の言論まで処罰対象となるおそれ

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国内を締めつけるだけでなく、国外にも影響を及ぼしかねない。中国で1日に施行された「民族団結進歩促進法」にそんな懸念が膨らむ。 教育や文化活動で中華民族の共同体意識を高め、テロや「民族分裂活動」を取り締まる――これが新法の狙いだ。 中国は人口の約9割を漢族が占め、残る1割を55の少数民族で構成する。憲法は民族の平等をうたうが、実際は漢族が圧倒的に優位な体制だ。特に習近平(シーチンピン)政権は少数民族の権利保障よりも国家統合を優先してきた。その延長線上に今回の新法がある。 典型が言語政策だ。内モンゴル自治区や新疆ウイグル自治区など固有の言語が使われる地域でも、教育現場では標準中国語の使用を指導する動きが強まっていた。新法はそれを追認し、標準語教育を義務づけた。少数民族言語の尊重もうたってはいるが、主眼がどこにあるかは明白だ。 そもそも中華民族という概念が政治的で、漢族支配の実態を覆い隠す面がある。新法は「中華民族は各民族が結集した多元的一体の大家族」とうたうが、一体性を重視するあまり、それぞれの民族文化の独自性を軽視していないだろうか。 新法は台湾についても「ともに中国人であるという認識を強める」と言及。台湾側は強く反発している。 さらに看過できないのが、新法を中国域外にも適用するとした点だ。国外の組織や個人が中国の「民族団結・進歩を破壊し、民族分裂を引き起こす行為」をした場合、法的責任を追及するという。 自国の重要な利益を守るため国外の行為に国内法を適用すること自体は国際的に認められている。問題は、何が違法とされるのかがあいまいなことだ。しかも、他国では適法な行為まで違法とされかねない。 例えば東京で集会を開いて中国の民族政策を批判すれば、関わった在日中国人、日本人とも罪に問われるおそれがある。実際に、日本でのネット投稿を問題視された香港の留学生が、香港に戻った後に国家分裂扇動罪で実刑判決を受けた例もある。 現在の中国社会では、政権を批判してきた学者や弁護士は弾圧されほぼ沈黙している。だが国外には様々なメディアを通じて声を上げ続ける人々がおり、新法はそこを標的にしているのではないか。 中国国内の厳しい統制が、国境を越えて他国の自由を縛るようなことがあれば、決してひとごとではない。日本を含む各国は、新法の運用を厳しく監視する必要がある。日本の言論も対象 中国で7月施行の民族団結法、「域外適用」に懸念「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません