ストーリー佐々木凌印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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2016年熊本地震の記憶や経験、得られた教訓を後世に伝える県の震災ミュージアム「KIOKU」(熊本県南阿蘇村)は、阿蘇の美しい自然に溶け込み、一見すると美術館のようだ。 展示内容も、災害の恐ろしさを前面に出していない。地域の人が自然からどんな恩恵を受けてきたのかを含めて紹介している。なぜなのか――。 KIOKUの構想は発災から約2カ月後に動き出した。県が設置した「創造的な復興」のための有識者会議で、「震災ミュージアムの設置は未曽有の大災害を経験した熊本県の責務の一つ」だと提言された。県はその後、ミュージアムの「あり方」を決める専門家会議を設置し、議論を進めた。 そこで決まったのがミュージアムを「『自然の豊かさ』と『自然の驚異』を学び、正しく畏(おそ)れること、自然災害との共存の歴史を伝える場」とすることだった。 会議の専門家7人のメンバーで、現在は熊本大学の副学長を務める竹内裕希子さん(地域防災・防災教育)は、KIOKUには二つの思いが込められていると振り返る。 一つは「自然は恐ろしさもあれば恵みもある」という意識だ。例えば阿蘇山は、世界最大級のカルデラに地震で割れ目ができたことで、湖の水が抜けて人が住めるようになったという説がある。地震に限らず、熊本市が発展してきた背景には、白川が氾濫(はんらん)を繰り返し、豊かな土地をもたらしてきたという歴史がある。 「地理や観光の専門家らが集まったことで、自然と共通認識になった」という。 もう一つは、竹内さん自身の経験だ。熊本地震前に南阿蘇村の中学校で防災教育を支援した。生徒にアンケートをしたところ、受講前と比べて確かに防災への意識は上がったが、同時に「南阿蘇は危険なところで、住みたくない」という意識も上がってしまった。 「怖さだけを伝えるだけでは、本当に災害を理解することにはならず、対策にはつながらないのではないかと気づかされた。なにより、『住むのを止めよう』となってしまったら意味がない」 竹内さんは、KIOKUの展示監修も担った。展示室と展示室の間の通路に「もし今地震が起きたら、あなたは誰に連絡を取りますか?」と書いたボードを設置するなど、災害を自分事として捉えてもらえるように工夫を凝らした。 竹内さんは「風化には良い風化と悪い風化がある。思考停止で、あったことを忘れてしまって同じことを繰り返してしまうのは悪い風化。でも、その時の教訓が生活や習慣に自然と根付いていくことは良い風化だと思うんです」と語る。「変わり続けるミュージアム」に 「自然と共に」というコンセプトは、23年の開館後も大切にされている。 運営責任者を務める久保尭之…この記事は有料記事です。残り507文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人佐々木凌西部報道センター|内政キャップ(福岡県政など)専門・関心分野災害・防災、宇宙、原発・エネルギー、環境関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする