2026年6月12日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●世界最大規模のスポーツの祭典、サッカーW杯が開幕した●主要開催地の米国が一部チームの役員や審判、サポーターの入国を拒む異例の事態に●「サッカーで世界を一つに」という理念に基づき、開かれた大会を守るべきだ
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単独競技では世界最大規模となるサッカーのワールドカップ(W杯)が、米国とカナダ、メキシコの3カ国を舞台に始まった。中東で米国とイランの対立が続く一方、開催地周辺では審判員や記者、サポーターが国境で足止めされるなど、緊張と混乱の中でのスタートである。 異常なのは米政府のイランチームへの対応だ。選手への査証発給は認められたが、一部スタッフは入国できず、選手には米国内での行動に厳しい制限が課されたという。公平な条件のもとでの対戦という、スポーツ競技の大前提が脅かされかねない。 矛先はイランにとどまらない。ソマリア人の審判員は正規の査証を持ちながら米国への入国を拒否された。昨年のアフリカサッカー連盟最優秀審判である。 アフリカや中東の報道関係者の入国も難航し、NPOのジャーナリスト保護委員会は記者に拘束や機器押収への備えを呼びかけた。サポーターへの影響も広がり、観戦を断念した人も少なくない。 開催国にはテロや犯罪を防ぎ、大会の安全を守る責任がある。だが、個々の事情を踏まえた審査と、出身国を理由に門戸を狭めることは別だ。 トランプ政権は不法移民対策としてソマリアなど多くの国や地域からの入国を禁止・制限している。移民規制や反イスラム色を帯びた政策を大会に持ち込めば、スポーツの政治利用とされても仕方あるまい。2018年に国際サッカー連盟(FIFA)へ送った「世界中の選手、役員、ファンを差別なく受け入れる」との約束を思い出すべきだ。米国とFIFAが果たすべき役割とは FIFAには米国に解決と協力を迫る責任がある。「サッカーで世界を一つに」を目標に、今回は参加枠を32から48に、試合数も64から104へと急拡大させた。であればなおさら審判員や記者、サポーターの入国を妨げる事態を許していいはずがない。観戦チケットの異常な高騰もあり、FIFAが掲げる「普及」が疑われていることを認識すべきだろう。 米国はかつてサッカー不毛の地と呼ばれた。1994年の米国大会を契機にプロリーグを再興し、地道な努力で今や野球やバスケットに迫る存在となった。歩みを支えたのは移民たちであり、競技人口を広げた女性たちだった。 サッカーは五輪を上回る加盟国・地域の数で多様性を体現してきた。世界から人々を迎え入れ、誰もが楽しめる環境を守ってこそ、その祭典にふさわしい。米国とFIFAはW杯の理念を自覚し、問題の解決を急がねばならない。イランのサッカーW杯代表に米国がビザ スタッフの一部には発給せず「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載される社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
















