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紙ひもで形を編み、和紙を張り込んで、柿渋や漆を塗った工芸品・近江一閑張(いっかんばり)。「蛯谷(えびたに)工芸」(滋賀県湖南市)の蛯谷亮太さん(34)は技術を受け継ぎ、父親の豊さんと制作に奮闘しています。竹編みの一閑張を応用 近江一閑張は、亮太さんの祖父・金介さん(故人)が半世紀前、竹編みの一閑張から着想を得た。作り方は一閑張とほぼ同じで、京都の清水人形の台の制作に用いる和紙を張る技を、紙ひもで編んだ立体物に応用した。 近江一閑張として売り出したのは、拠点を京都から滋賀に移した1988年から。カゴやお盆など、つやのある商品の数々に落語家の桂天吾さんは「めちゃめちゃ、きれいですね」とほれ込む。桂天吾さんのプロフィール1996年生まれ。神戸市出身。関西学院大学教育学部を卒業後、桂南天に弟子入り。若手落語家の登竜門と言われる「令和4年度NHK新人落語大賞」本選の6人に選ばれる。すべて紙、形は自在 天吾さんが「全部、紙でできているんですか?」と尋ねると、亮太さんは「そうなんですよ。編み目が浮き出るまで張り込むのが、うちの技術です」と胸を張った。 紙での制作は「丈夫で軽い」と利点を挙げる。骨組みを作る紙ひもは、米袋の結びに使われる強度があるものだという。「いろいろな形や大きさに編みやすいです」 できた骨組みに張るのは富山特産の五箇山和紙だ。下張りをした後、色和紙で上張りする。紙同士なので密着性が高く、破れにくい。 仕上げに塗る柿渋には、防虫や撥水(はっすい)の作用がある。ウレタン塗料を塗ったお盆などは、防水効果があるので水洗いもできるという。 商品の修理やメンテナンスにも応じており、「一生ものとしてお使いいただけます」と話す。パティシエ、バイク整備を経て 亮太さんは、湖南市の工房で祖父や父親の作業を見て育った。ただ、学生の頃は「近江一閑張の魅力が分からなかった」。高校卒業後はパティシエの修業やバイクの整備など、興味のあった仕事に就いた。 転機は23歳の時だった。バイクレースの事故で大けがをし、バイク整備の仕事ができなくなった。同じ頃、父親の豊さんから「自分の代で(工房を)潰すしかない」と告げられた。 祖父の代から続いた技術がなくなるのは「寂しい」と思い、豊さんに「継ぐ」と宣言した。「順風満帆な見通しではないので、父は『うれしさ半分、不安半分』という感じでした。『稼ぐのは大変』とも言われました」と振り返る。 修業は、カゴなどの定番商品の制作から始まった。「小さい頃から手を動かすことが好きだったので、苦ではありませんでした」。4~5年経つと、作れる商品も増え、頭で描いたものを形にできる近江一閑張の魅力を一層感じるようになった。アートとのコラボも 3代目となり、新たな客層を増やすことにも力を入れる。商品の魅力をホームページで発信するとともに、2023年、城下町の風情が残る滋賀県近江八幡市の八幡堀に直営店を開いた。それまでは百貨店での展示販売が中心だった。 アートとのコラボレーションにも積極的だ。張り込みの技術を使って壁面の装飾をしたり、金網に和紙を張り合わせたり。「若い人にも魅力的と思ってもらえるようアピールしています」 天吾さんが「落語とのコラボはどうですか?」と提案すると、「新しいことをいろいろとしていきたいので、機会があればぜひ挑戦してみたいです」と笑顔を見せた。職人のプロフィール えびたに・りょうた 1991年滋賀県生まれ。2015年から近江一閑張の3代目。伝統を守りつつ、新たな可能性を求めた活動も。






