ストーリー岩本美帆印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
[PR]
バレエダンサーの二山治雄さん(29)は、2014年のローザンヌ国際バレエコンクールで日本人男性としては熊川哲也さん以来25年ぶりに1位を取り、海外へと挑みました。しかし、身長180センチ以上が主流のバレエ界で、二山さんは167センチ。コロナ禍にも阻まれ帰国しました。フリーとして行く先を模索した末に上京し、東京バレエ団にたどり着くまでと、日本で踊ることへの思いを、語ってもらいました。【連載】上京STORY進学や就職、それぞれの理由を胸に、多くの人が東京にやってきます。この春上京した人、今も東京で暮らす人たちの経験をたどりながら、一人ひとりの「上京ストーリー」を描きます。孤独だったパリ生活を経て、29歳で初めての「上京」 29歳、初めての東京一人暮らしをしています。1年前から所属する東京バレエ団の近くに住んで、自転車で毎日レッスンに通う日々です。これまでは長野や海外に住んでいたので、今回の東京暮らしは初めての「上京」です。 「ローザンヌ国際バレエコンクール」で優勝したのは17歳、高校2年のときでした。米国のバレエ団を経て、17年にパリ・オペラ座バレエ団の契約団員になりました。 「パリオペ」での生活は孤独でした。僕以外は付属のバレエ学校から上がってきたフランス人ばかりでファミリーみたい。そこに言葉の話せない、背の低いアジア人がポツンといて。誰にも話せないし、話しかけられない。誰も僕を見ていなかったと思います。契約団員というのもあって、僕だけロッカーもなかった。「ここにいていいのかな」と、ずっと悩みながら暮らしていました。 コロナ禍で帰国した後は、人生で初めてアルバイトをしました。長野の実家近くのスーパーで深夜3時から品出しをしたり、老人介護施設で働いて、お年寄りの手を取ったり。それまでバレエしか知らなかったので全てが新鮮で楽しかったし、「自己満足ではなく、お客さんのために踊ろう」という気持ちが芽生えました。 そんな中でもやっぱり、海外、特にバレエ発祥の地であるヨーロッパで踊りたいという思いは、持ち続けていました。ヨーロッパはバレエの歴史的・文化的背景、市民への浸透度が違います。お声がかかった舞台で踊るフリーランスとして日本で活動しながら、海外バレエ団のオーディションを受け続けましたが、ご縁がなく……。高身長のバレエ界 167センチの僕の居場所は 今のバレエ界は、男性も女性もすごく背が高い。そんな中で167センチの僕が踊るのは、やはり難しいんじゃないかと感じていました。ありがたいことにフリーでの仕事は途絶えることがなく、「このままフリーでいいや」という思いと、「やっぱり海外バレエ団で全幕踊りたい」という思いで葛藤していました。 転機は24年、東京バレエ団のプリンシパル、秋山瑛(あきら)さんを通じて、団長の斎藤友佳理さんとお会いしたことです。 僕の経歴も含め親身に話を聞いてくれ、「もしもバレエ団に入った場合、どうしたらあなたは幸せになれるのか」といったお話もしてくれた。こんなに深く話を聞いてくれるなんてと、入団したい気持ちが湧き上がってきました。僕の身長のことにも触れ、「こういう役なら」とたくさん挙げてくださって。僕も主役にはこだわらないということをお伝えしました。 実は当初、東京バレエ団の公演を見たことがなかったんです。自分にとってバレエは出るもので、見るものではなかったので。それを聞いた斎藤さんはあきれていました。「サイテー」って(笑)。 改めてチケットを買い、『ザ・カブキ』を見ました。(巨匠モーリス・ベジャールが歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』をもとに東京バレエ団のために制作した)本作は、まさに日本のバレエ団ならではの作品。クオリティーも高く本当に魅力的で、自分も入りたいという気持ちが固まりました。初舞台前に骨折 お客さんに支えられ跳んだ 入団条件は「原則25歳まで…この記事は有料記事です。残り1301文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする






