【社説】個人情報保護法の改正案 人々の不安を直視して審議を尽くせ2026年6月9日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●AI開発を促すための特例を盛り込んだ個人情報保護法の改正案が、国会で審議中だ●本人同意なく第三者提供できる特例の導入で、病歴など敏感な個人情報も、名前や住所とともに事業者の手に渡ることが想定される●漏洩(ろうえい)などが心配になるのは当然だ。人々の不安を直視した議論を求める

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病院が把握する病歴など、他人に知られたくない個人情報が、自分の同意なく第三者に渡るとなれば、漏洩(ろうえい)などが心配になるのは当然だ。敏感な個人情報への保護を緩める法改正を進めるなら、こうした不安を直視し、可能な限り解消を図るべきだ。 人工知能(AI)の開発促進のため、規制に特例を設ける個人情報保護法の改正案が、国会で審議中だ。5月末に衆院を通過し、参院での審議がこれから本格化する。 現行法では、個人データを第三者に提供したり、人種や信条、病歴、犯罪歴といった「要配慮個人情報」をインターネット上から集めたりするには原則、本人の同意が必要だ。特例では、個人が識別されない形でAI開発を含む統計情報などの作成に使われるなら、同意を不要とする。 この特例について社説は、AI開発の重要性を認めつつ、不当な差別や偏見などにつながりやすい要配慮個人情報が不適切に取り扱われかねない、と指摘してきた。衆院での審議で、懸念は払拭(ふっしょく)されていない。逆に、本人同意なしに第三者提供が可能になる個人データに、非公開の要配慮個人情報が含まれることが明確になり、一部野党が強く批判している。 特例では、大企業から個人まで幅広い事業者が提供先になり得る。病歴などを、本人の名前や住所を含む形で受け取り、事業者側で個人とひもづかない形に加工する想定だ。政府は、新設する課徴金や事業者名などの公表、提供元との書面での合意といった対応で、適正な取り扱いを確保できると説明する。 だが要配慮個人情報は、万一漏れれば、取り返しのつかない甚大な被害を本人にもたらす。本人同意なしに名前などとともに利用事業者の手に渡ることに、抵抗を感じる人は少なくないだろう。消費者団体や労働組合の連合なども懸念を表明している。AI理由にした保護の後退、納得は ところが政府の説明は、名前などの事前の削除について「(情報を)出す側は非常に負担になる」(松本尚デジタル相)と強調するなど、利活用優先の姿勢が目立つ。人々が抱く不安に鈍感すぎないか。AIを理由にした情報保護の後退に、広い理解が得られているとは思えない。 参院の審議では、要配慮個人情報の扱いが改正案のままでよいか、改めて検証する必要がある。患者の個人情報を仮名・匿名化したうえで提供し、新薬や治療法の開発に役立てている「次世代医療基盤法」の考え方も参考になるだろう。人々の不安に正面から応える議論を強く求める。【社説】個人情報保護法の改正案 AI開発促す規制緩和に残る懸念「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする