【社説】同盟国に負担増求める米国防長官 価値観の共有で信頼回復を2026年6月1日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●ヘグセス米国防長官がアジア戦略をめぐる演説で同盟国の負担増を要求●中国の軍拡に警戒示しつつ、米中関係は「長い間で最も良好」と評価●価値やルールより軍事力と国益を重視。同盟は損得勘定ではない。まずは信頼回復と外交努力を

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同盟国にさらなる負担を求める前に取り組むべきことが、米国にはある。イラン攻撃など違法な軍事行使で傷ついた国際社会の信頼を築き直すことである。 シンガポールでのアジア安全保障会議で、ヘグセス米国防長官が第2次トランプ政権のアジア太平洋戦略について演説した。「豊かな国の防衛を米国が肩代わりする時代は終わった」「ただ乗りは許さない」として国内総生産(GDP)比3.5%の防衛支出を同盟国に求めた。 演説は中国の軍拡や軍事活動への警戒を打ち出した。日本から台湾、フィリピンへと連なる「第1列島線」に沿った抑止態勢を重視し、「いかなる国家にも覇権を握らせない」と強調した。 中国は核戦力を含む軍備拡張を進め、東・南シナ海で威圧的な行動を強めている。台湾海峡の平和と安定を守るためにも抑止力は必要だ。一方でヘグセス氏は、米中関係について「長年で最も良好な状態」とも語った。先の米中首脳会談で合意した「戦略的安定」を目指す考えを示した。中国の覇権は認めないが、衝突や体制転換も望まない姿勢がうかがえた。 見過ごせないのは、昨年に比べて対中批判が抑制的になった半面、同盟国への負担要求と、国際秩序を支えてきた理念や価値観への無関心が際立ったことだ。 米国自身が掲げ、日本も支持してきた「自由で開かれたインド太平洋」や「ルールに基づく国際秩序」への言及は影を潜めた。むしろ強調されたのは軍事力や力の均衡、国益を優先する考えだ。 しかし、同盟は損得勘定ではない。日米同盟が長く機能してきたのは、軍事力だけでなく民主主義や法の支配など価値観の共有があったからだ。目先の利益だけで結ばれた関係は容易に揺らぐ。 アジアには欧州安保協力機構(OSCE)のような安全保障の包括的な枠組みが存在しない。だからこそ日米豪印の戦略対話(クアッド)や東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連会議、日米韓など、重層的な対話の枠組みが重みを持つ。 直前のクアッド外相会合でも、重要鉱物の供給網や海洋安全保障などの実務協力が確認された。地域の安定を支えるのは軍事だけではない。外交や経済協力が必須だ。 今回の会議に中国が国防相を派遣せず、米中国防相会談が実現しなかったことも残念だ。偶発的衝突を防ぐには、軍同士の不断の意思疎通が欠かせない。米中双方には対話を維持する責任がある。米国防長官、演説で「棍棒外交」鮮明 中国に対する発言に変化も「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする