【社説】外為法改正で審査強化 対日投資妨げない高い透明性を2026年6月1日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●海外からの対日投資の審査強化を、日本政府が安全保障の観点から進めている●個別案件の審査に、安保関連部局も関与する枠組みを近く新設。4月には、買収に対する中止勧告を18年ぶりに出した●必要性は理解できるが、問題のない投資まで妨げぬよう高い透明性を確保すべきだ
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日本政府が海外からの対日直接投資の審査強化に動いている。米国の対米外国投資委員会(CFIUS)の日本版を近く新設する。個別の買収では、18年ぶりに外為法に基づく中止勧告を出した。 安全保障上、重要な技術や情報を守るため、国が投資のプロセスに一定程度関与すべき場合はあるだろう。だが安保ばかりが前面に出て、予見可能性が低く投資しにくい国だと海外から見られれば、問題のない投資まで滞りかねない。運用が恣意(しい)的と受け止められぬよう、高い透明性を確保する必要がある。 「日本版CFIUS」は、個別案件の審査に、安保関連部局なども関与させる枠組みだ。審査制度を所管する財務省とともに、国家安全保障局が共同議長を担う。規制対象の拡大などに加え、この枠組みを裏付ける規定を盛り込んだ改正外為法が、今の特別国会で成立した。 個別案件では、工作機械大手の牧野フライス製作所の買収を進めていたアジア系の投資ファンドに対し、政府が4月に買収の中止を勧告。ファンド側も受け入れた。 中止勧告は2008年以来2例目だ。片山さつき財務相は、牧野フライスの工作機械が、国内の防衛装備品メーカーに広く使われていると指摘した。買収されれば「国の安全を損なう事態を生ずるおそれがある」と説明する。 一連の審査強化の必要性は理解できる。ただ、外為法は第1条で「対外取引が自由に行われることを基本」とするとうたう。政府の意向で、民間企業が経営方針の転換を余儀なくされるのは本来望ましいことではなく、重い説明責任を伴う。個別案件の詳細な説明は難しくても、指針や想定例などの形で、基準や根拠をさらに明確に示す工夫が、政府には求められる。 政府は、成長戦略として対日投資の呼び込みも進める。30年に投資残高120兆円といった目標を掲げるが、実績は24年末に53兆円余りとなお隔たりがある。国の安全を確保しつつ、経済活性化との両立を図ることが重要だ。「安保」に名を借りた動き 世界では、「安保」に名を借りた保護主義的な動きが目立つ。日本製鉄によるUSスチール買収は、全米鉄鋼労働組合(USW)の強い反対を背景に、バイデン前米大統領が安保を理由に買収禁止を命令し、実現が大幅に遅れた。この買収を認めたトランプ大統領も、安保を根拠に一方的な高関税措置を振り回す。 日本はこうした流れにくみすることなく、国境を越える自由な経済活動を、可能な限り守っていくべきだ。牧野フライスの買収断念 アジア系ファンドが政府の中止勧告受け入れ「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする














