【社説】日比の安保協力強化 抑止に偏らない連携で地域に貢献を2026年5月31日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●中国を念頭においた日本とフィリピンの安保協力がさらに進むことになった●軍事情報の共有や退役した護衛艦の輸出が検討されている●軍事に偏らず、幅広い協力を通じて、地域の平和と安定に貢献すべきだ

[PR]

中国を念頭に、安全保障分野での協力を積み上げてきた日本とフィリピンが、軍事情報の共有や武器輸出を通じて、さらなる関係強化をめざすことになった。 中国の強引な海洋進出に直面する両国が、その冒険主義的な活動を牽制(けんせい)するために協力することは理解できる。だが、軍事に比重を置きすぎれば、逆に地域の緊張を高める恐れもある。中国との対話を含めた、バランスのある取り組みが必要だ。 フィリピンのマルコス大統領が国賓として日本を訪れ、高市早苗首相と会談した。両国関係を「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げすることで一致。安保に関する機密情報を共有するための「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の締結に向けた交渉開始や、退役する海上自衛隊の護衛艦の輸出に向けた協議の加速で合意した。 フィリピンは米国とGSOMIAを結んでおり、日本が加われば、南シナ海周辺でフィリピン軍が得たレーダー情報などを、3カ国で共有できるようになる。 日本とフィリピンの安保協力は、2022年に発足したマルコス政権下で急速に進み、すでに「準同盟」級と評されてきた。25年9月には、自衛隊とフィリピン軍が共同訓練などで行き来しやすくなる「円滑化協定」が発効。今年1月には、物資を融通しあう「物品役務相互提供協定(ACSA)」に署名した。 今年4~5月にフィリピンで行われた米比主催の大規模合同演習には、自衛隊が初めて本格参加している。 力による対抗措置が先行し、中国との相互理解や信頼醸成の取り組みが後回しになるなら危うい。情報共有や武器輸出を通じて、日本が南シナ海情勢への関与を強めるなら、専守防衛との関係や自衛隊の役割も問われる。 フィリピンの対中姿勢が、指導者の交代などによって変わりうることも、念頭に置かねばならない。ドゥテルテ前大統領は米国と対立し、中国には融和的だった。マルコス政権もイラン情勢を受け、エネルギー分野で中国との協議に前向きな姿勢を示すなど、対峙(たいじ)一辺倒ではない。 首脳会談では、サプライチェーン(供給網)の強化など、経済安全保障分野での協力や、経済連携協定格上げの検討、フィリピンや東南アジア諸国連合(ASEAN)の石油備蓄への支援などでも一致した。 中国に対する抑止だけに偏ることなく、地域の平和と安定にもつながる包括的な協力を進めることが重要だ。日フィリピン、軍事情報共有に向けて交渉へ 対中国を念頭に連携深化「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする