【社説】ガラスの天井を破る快走 今村聖奈騎手が「オークス」で優勝2026年5月30日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●日本の女性騎手が、国内競馬の最上位レースを初めて制した●男性中心の世界に、実力で風穴をあけた勝利だ●男女が対等に競うスポーツの特色を、競馬界は組織でも体現してほしい

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能力が正当に認められにくいという、女性の前に立ちはだかる壁を乗り越えた。スポーツにとどまらない快挙だ。 競馬の「オークス」で今村聖奈騎手が優勝した。国内最上位にあたるGⅠレースを日本の女性騎手が制したのは初めて。GⅠで騎乗する機会すらなかなか恵まれない中で発揮した力量は、男性中心の世界に一陣の風を吹かせた。 競馬界は歴史のひとこまで終わらせず、今村騎手やあとに続く女性騎手を支えて欲しい。男女対等に競うこのスポーツの特色を、調教師や管理職へより女性を積極的に登用して、組織でも体現したい。 男女が同じ一つのレースで一緒に争う競技は少ない。それが女性の歩む道を険しくしてきた面は否めない。海外では1960年代の女性解放運動が競馬にも広がったが、男性によるストライキで出走が阻まれるなど、偏見と差別的な扱いは著しかった。 米国で画期となったのは93年、ジュリー・クローンさんによる三冠レースのベルモント・ステークス初優勝だ。女性の実力を認めさせ、引退まで3704勝を積み上げた。 国内では途上の印象はさらに強い。日本中央競馬会の女性騎手は、競馬学校で受験が認められたのが85年、そこから実際の誕生は96年と歴史は浅い。今も131人中女性は6人と5%にも届かない。 強い馬への騎乗依頼が経験や実績主義で、女性には限られる傾向や、出産・育児を経ても長く続けられるような方策が十分とは感じられない環境――。競馬界への入りにくさの解消や定着が進まないのは、根強い男性中心の価値観と無縁ではないだろう。 22歳の今村騎手はデビューした4年前は51勝を挙げて新人賞に輝いたものの、その後は落馬のけがなどもあり、どん底を味わった。そこから一歩ずつ実績を重ね、GⅠの騎乗機会をつかんだ。 オークスでは、最後の直線で後方から密集した馬群を割るように抜き去ったレース運びが圧巻だった。馬と向き合い、観察を重ねながら意思を通わせる能力は際立っているようにみえる。女性が能力を発揮できる環境を 馬の背の騎手はランドセルにも例えられる。時速60キロ以上で駆ける馬上で一瞬でも平衡を失えば放り出される。馬にとっても背中で暴れるお荷物となる。人馬一体の体力と胆力、レースを戦う知力。どれも性別に関係なく挑むに足るテーマだろう。 競馬でも、それ以外の世界でも、長く安心して働ける環境と平等に評価される仕組みを整えれば、男女問わず活躍できる領域は広がるはずだ。クラシック初騎乗、女性騎手がGI初勝利 今村聖奈がオークス制覇「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする