[PR]

アナザーノート 政治部記者・小村田義之 会ったこともないのに、その存在がずっと気になっている人がいる。そんな人がいたのだと、口伝えに聞いていただけなのに。 西広整輝氏。1930年生まれ。東大を卒業後、旧防衛庁(現・防衛省)の発足2年後の56年にキャリア官僚として入庁し、88~90年に事務次官を務めた。「ミスター防衛庁」と呼ばれ、冷戦期の防衛政策の土台を築いた人である。95年の暮れ、65歳で急逝した。ニュースレター「アナザーノート」政治や経済の最前線を取材する記者のノートから、とっておきの話をお届けする「アナザーノート」。デジタル版有料会員限定で、隔週日曜にメールで先⾏配信しています。 私が防衛庁を担当したのは98~99年。北朝鮮の弾道ミサイル「テポドン」が日本上空を通過し、能登半島沖に不審船が現れ、周辺事態法が成立した。緊張が高まり始めた時期だった。 それでもなお、庁内にはどこかのんびりとした空気が残っていた。東京・六本木の古い庁舎で、夕方になると幹部の部屋を訪ね、ひざ詰めで話し込む。そこで幾度となく耳にしたのが、「西広さんがこう言っていた」という言葉である。 その語り口は、官僚的な細部…