有料記事浜田知宏 松浦祐子 グラフィック・童佳奕 専任記者・山崎啓介2026年5月26日 7時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする 新年度が始まりました。このタイミングで値上げされた商品やサービスも多く、買い物をしていて「高い」と感じる場面も増えたのではないでしょうか。ここ30年の消費者物価指数を振り返り、物価の変遷を追ってみました。
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東京・新橋の「うなぎ市松」は1966年創業。自家製のさっぱりしたタレに蒸したかば焼きが香ばしいランチメニュー「鰻丼(うなどん)」(税込み1800円)は会社員に人気だ。 店主の長谷川知幸さん(54)が働き始めた30年ほど前、値段は800円だったという。会社員が気軽に食べられるようにと、できるだけ価格を抑えてきたが、赤字になることもあり、仕入れ値の上昇に併せて200円ずつ値上げしてきた。 「会社員たちの懐が潤ってきたようには見えないから、ランチで食べられる価格に抑えたい。でも、米も油も値上がりしている。物価高もここら辺で止まってほしいというのが本音です」 近年、物価の上昇が著しい。 総務省が食品や光熱費、教育などの値段の変化を数値化した「消費者物価指数(CPI)」によると、うなぎのかば焼きの値段は1991年から2025年までに約2.5倍になった。 この間の物価の変化を比較可能な387品目で調べると、上昇率が2倍を超えたのは23品目あった。値上げが特に大きかったのは「たばこ(国産品)」と「さんま」で約2.6倍。次いで「灯油」が約2.5倍、「わかめ」と「水道工事費」が約2.4倍だった。 このほか、1.5倍以上~2倍未満が107品目、1.0倍以上~1.5倍未満が188品目で、全体の82%にあたる318品目が値上がりしていた。 値上げの理由はさまざまだ。 統計局などによると、うなぎのかば焼きは稚魚がとれなくなったことなどを背景に徐々に値段が上がってきた。一方、米は、消費が減ったのを受けて下落傾向が続いていたが、23年に猛暑で不作になったことをきっかけにここ数年は急騰した。 値上げや値下がりとは別に、毎年の値段のぶれが大きかったのは「はくさい」「キャベツ」「レタス」「たまねぎ」など、生育期の気象条件が大きく影響する葉もの野菜で目立った。 一方、「ケチャップ」「粉ミルク」「せんべい」といった加工品は値段がぶれが小さく、特に「カレーライス(外食)」「ハンバーグ(外食)」などは値段が安定していた。 とはいえ、ここ30年超を見渡すと、値上げが激しくなったのは近年になってからで、日本はバブル崩壊後の1990年代から、物価や賃金が上昇しない傾向が長く続いていた。 2010年時点で値段が上がっていたのは55%にあたる213品目で、20年時点でもまだ71%の276品目。消費者物価指数の総合指数も20年代に入るまで110%を超えることはなかった。 また、厚生労働省の毎月勤労統計では、従業員5人以上の事業所で働く人(自営業やフリーランスを除く)の賃金を基に計算した「購買力」を示す実質賃金指数は、この間に1割ほど減った。 物価の上昇に賃金の伸びが追いついていないことを示しており、この間は「失われた30年」とも呼ばれる。 横浜市立大でマクロ経済学を研究する中園善行教授によると、日本はバブル崩壊以降、「雇用を守る代わりに賃金を抑える」ことを社会全体で受け入れた流れがあった。失業率が跳ね上がるのを抑えた一方、賃金は伸び悩み、正規・非正規の格差も広がった。 2000年代になると、低金利や法人税の引き下げといった政策がとられ、企業の収益は大きく改善した。円安で原材料費が高騰した時期でも、すぐに価格転嫁はせず、企業が吸収したり、技術開発でどうにかする傾向が強かった。 中園さんは「この間に物価が安定していた要因の一つとして企業努力が挙げられる。物価が急騰しないことは家計の視点でもメリットだった」と話す。 ただ、従業員の賃上げは後回しになり、米国のように需要が増えることで物価が上がるという動きにはならなかった。 しかし、ロシアがウクライナに侵攻した2022年以降は状況が大きく変わった。原油高と円安が同時に進行。値上げもやむなしという意識も広がり、物価の上昇が一気に進んだ。 中園さんは「緩和的な金融環境が続いており、足もとの為替レートも円安が持続している。値上げは企業の収益につながり、市場にはインフレが今後も続くという期待感も生まれつつある。今後の焦点は、企業の収益がどれだけ賃金や家計に還元されるかでしょう」と語った。 物価上昇を受けて、注目を集めているのは群馬県だ。 総務省の「消費者物価地域差…この記事は有料記事です。残り1408文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人浜田知宏デジタル企画報道部専門・関心分野データ分析、オープンデータ、子ども行政、教育松浦祐子デジタル企画報道部|データジャーナリズム専門・関心分野介護、医療、地域包括ケアシステム、認知症関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする








