(後藤正文の朝からロック)ひとつの作品、たくさんの連なり2026年5月24日 5時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
[PR]
22日にNHK総合で放送された「ドキュメント72時間」という番組にナレーターとして参加した。レコードやCDなどの音楽ソフトを販売する8階建てのビル、タワーレコード渋谷店に密着した回で、国内外から訪れる様々な人のコメントが印象的だった。 音楽の楽しみ方も時代と共に移り変わり、配信サービスのアプリを利用して楽曲を聴く人が増えた。音楽ソフトのプレーヤーを持っている人の割合は、少しずつ減っていると感じる。自分が主宰している音楽レーベルでも、CDなどは作らずに配信のみでリリースする機会が増えた。最近は、石油製品の不足や音響機材の値上がりで音楽ソフトを制作する経済的な負担が増加し、収益を得るのが難しくなっていると感じる。 番組では、タワーレコード渋谷店の店頭に多くの人が集い、様々な時代に発表された作品の魅力を熱く語るリスナーたちの姿があった。その日やその週のヒットチャートとは別の角度で、それぞれの人生のなかで音楽に出会い、思い思いのタイミングで音楽を楽しむ様子に感動した。時間や地域をこえて作品を受け取り、深く理解しようとするリスナーが行き来する風景は、音楽家にとって希望そのものだと思った。 環境への負荷を考えると、プラスチックやビニール製の音楽ソフトのすべてを肯定的に捉えるのは難しい。しかし、ジャケットのアートワークやデザイン、スタジオでの演奏や録音だけでなくレコードに溝を掘る技術まで、ひとつの作品には多くの人の役割と仕事が連なっている。この連なりこそが文化で、僕にとってはCDやレコードへの愛着への源泉だと言える。 誰かの人生の複雑さのかたわらで、仲間と作った作品が何らかの役割を担う日が来るかもしれない。まだ出会っていないリスナーとの新しい連なりや関係を信じて、音楽を続けたいと思った。(ミュージシャン) ◇毎月第4日曜日に掲載します。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする






