藤井聡太の変化 「完璧な将棋」を捨てて手にした「完全な勝利」編集委員・北野新太印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

[PR]

新幹線は名古屋駅のホームに滑り込んでいく。 ドアが開き、乗車したのは藤井聡太だった。 主催紙記者として随行する私の隣席に着き、手荷物を棚に上げる。 ちょうどお昼時、キヨスクで購入したとおぼしきサンドイッチを折り畳みテーブルに置いた。 京都駅には34分後に到着する。 私は考えた。 食事の合間に5分だけ話を聞かせてもらおう。 ◇ 藤井聡太名人(23)が糸谷哲郎九段(37)の挑戦を受けた第84期将棋名人戦七番勝負は17日、大阪府高槻市で決着した。 名人が無傷の4連勝で防衛、4連覇を飾って終幕した。 完全なる4連覇だった。 4度目の名人戦で初のストレート決着という意味だけではない。藤井は全4局において棋勢を失うような手を一度も指さなかった。 AIが示す最善手を逃すことはもちろんあったが、評価値を大きく下げる悪手も、検討室の棋士たちが思わず叫んでしまうような落手もなかった。37度目のタイトル戦で表現したのは過去最高の水準に達する棋譜だった。 なぜ完全なる防衛劇を創造できたのか。 逆説的だが、藤井が「完璧な将棋」という理想、あるいは呪縛から解き放たれたからである。 第4局の前日、語ってくれた。 「棋士になった当初に思って…この記事は有料記事です。残り1567文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人北野新太文化部|囲碁将棋担当専門・関心分野囲碁将棋関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする