ロマンス詐欺の核心は,グルーミング,つまり関係構築にあります。雑談,相談,秘密の共有を重ね,心理的な距離を詰めてから犯行に及びます。この点は,児童の自撮り被害や福祉犯被害とも重なります。
生成AIは,この関係構築のコストを大きく下げます。相手に合わせた言葉,写真,物語を大量に作れるようになれば,詐欺犯はより多くの人に,より自然な親密さを演出できます。
海外では,ロマンス詐欺や投資詐欺の手口は「Pig-butchering scam」,つまり関係を十分に育ててから搾取する詐欺として表現されます。しかし,この表現が被害者非難につながってはいけません。問われるべきは,だまされた側の落ち度ではなく,人が関係性の中で判断を奪われていく犯罪の構造です。
だからこそ,「見破る力」を個人に求めるだけでは限界があります。「自分は被害にあわない」といった他人事にせず,防犯アプリのインストールなど,予防行動を社会全体で広げていく必要があります。社会心理学は騙される人の心理の理解のみならず予防行動の普及にも有用です。
注:木村先生と評者らの共同研究で,自分は詐欺の被害にあわないと思っている人ほど,詐欺犯から接触があった場合に危険な行動をとると答えることがわかっています。 関心のある方は下記もご覧ください。






