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7月23日に68歳で亡くなった作家・東野圭吾さんの代表作「ガリレオ」シリーズの最新刊「永遠の記憶」が5日に刊行された。東野さんの作品を献身的に愛した将棋棋士にとって、永遠の記憶に刻む物語になる。 移動中の神谷広志はいつも黒いリュックサックを背負っている。 職業、将棋棋士。年齢、65歳。 対局前日、浜松の自宅を出て将棋会館のある東京や大阪に出向く時も、使い込まれた相棒を必ず持っていく。 対局室に入った後も、正座する座布団の近くに置く。 中身はいたって普通だろう。 扇子、ティッシュ、手帳、ペン、替えの眼鏡、眼鏡拭き、持病の薬、水筒。 いや、普通とは言い難いものがたったひとつだけある。 東野圭吾さんの代表作「容疑者Xの献身」の文庫本。 いつも無造作にバッグの底に押し込んでいるけれど、なくてはならないアイテムだ。 新幹線での移動中、ちょっと退屈になったらページをめくる。 定宿に到着した後、なんとなく眺めてみたテレビがつまらなければリュックの奥に手を伸ばす。 クライマックスから読んだりはしない。 冒頭の一文《午前七時三十五分、石神はいつものようにアパートを出た。》から読み始める。 始まりから辿(たど)ってこそ、物語を存分に味わえると信じているからだ。 2005年に単行本として発表されて以来、何度繰り返して読んできたか分からない。 部分的にはそらんじることができるくらいに、何度も、何度も。 56ページに「将棋」が登場することがちょっとうれしい。 1990年代から東野作品を熱心に読んできたが、不動のベストワンは「容疑者Xの献身」ということになる。 2008年に文庫化されてから18年、ボロボロになっては買い替え、現役の3冊目もかなり痛んできたので4代目を検討中だ。 晴れの日も雨の日も、勝った夜も負けた夜も、リュックの奥で主人とともにあった。 「ガリレオ」シリーズ3作目にして初の長編、6度目の候補で待望の直木賞をもたらした代表作、本格ミステリーか否かで広まった論議……様々な顔を持つ作品だけれど、神谷広志にとって真実はひとつしかない。 圧倒的に面白い、ということ。 読んでいていつも楽しく、読み終える前のラストシーンにはいつもほろりとする。 時には涙がこぼれてしまう。 何度読んだか分からないというのに。 先を読むプロフェッショナル…