【社説】米国が国際刑事裁の解体を主張 人道の「砦」を守る連携を2026年7月15日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアするこの社説のポイント●トランプ米政権が国際刑事裁(ICC)の「解体」を主張。同盟国にも同調を求める●ICCは戦争犯罪や集団殺害を裁く「最後の砦」。権力者の不処罰を許さず、将来の犯罪を抑止する●「法の支配」を守るため、日本は国際社会と連携して米国に方針撤回を求めよ

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戦争犯罪や人道犯罪を阻止する「最後の砦(とりで)」を大国が壊そうとしている。大戦後の国際秩序の土台となってきた「法の支配」を根底から揺るがす暴挙である。 トランプ米政権が、国際刑事裁判所(ICC)を機能停止に追い込む方針を打ち出した。ルビオ国務長官が米紙への寄稿で「あらゆる手段を使ってICCを解体する」と表明した。国務省も各国に脱退を促し、ICC職員の制裁を強め、裁判所を制裁対象とすることも検討中という。 ICCは、2度の世界大戦や旧ユーゴスラビア、ルワンダでの残虐行為への反省から集団殺害や戦争犯罪、人道に対する罪を犯した個人の責任を問う初の常設裁判所として2002年に設立された。日本を含む125の国・地域が加盟する。 米国はICC設立条約に加盟せず、米兵や政府高官が裁かれることを警戒してきた。米兵への捜査やイスラエルのネタニヤフ首相への逮捕状に反発し、検察官や裁判官を制裁してきた。今回は、裁判所自体の存立を危うくする段階へ踏み込んだ。 非加盟国のロシアもプーチン大統領への逮捕状に反発し、赤根智子所長らを指名手配した。中国も非加盟だ。米国は同盟国も巻き込んで制度全体の解体を図ろうとしている。国際司法への圧力を危険な段階へ進めるものだ。 トランプ政権は国の主権を国際規範より優先し、指導者ら個人を裁く仕組みに異議を唱えるが、法の支配とは国の大小や軍事力にかかわらず共通のルールで国や指導者を縛る考え方だ。これが崩れれば大国ほど責任を免れ、小国ほど力に屈する弱肉強食の世界になりかねない。 集団殺害や戦争犯罪は、指導者が命じたり、国内司法が機能しなかったりするからこそ国際社会が責任を問う仕組みが必要だ。赤根所長はICCの使命を「不処罰の撲滅」と語ってきた。その原則を貫き、将来の犯罪を抑止する。それこそがICCの存在意義ではないか。 欧州連合(EU)がICCの独立性を支持し、外交や財政などを通じて活動の継続を支える姿勢を示したのは当然だ。昨年、米国の制裁に反対する79カ国・地域の共同声明に日本は加わらなかった。対米配慮を優先する姿勢は、もはや通用しない。 木原稔官房長官はICCへの支持を表明した。その言葉を行動に移す時だ。日本は欧州など他の加盟国と連携し、米国に方針の撤回と、国際社会における法の支配を守る責任を求めるべきである。トランプ政権がICC解体を主張 「存続の危機」、日本も懸念を表明「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません