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【GLOBE特集】再分配 Update(2)=全5回 富裕層でなければ都心では暮らせない――。そんな市場原理に、真正面から対抗する都市がある。パリだ。富の偏在が進む世界にあって、パリは不動産市場などから税を集めて、中低所得層のための住宅を整備している。庶民の「住む権利」を取り戻す闘いだという。そんな住宅の象徴的な物件への取材許可が出た。記者はパリに向かった。 セーヌ川の左岸、パリ7区の超一等地に、そのアパルトマンは立つ。 オルセー美術館の最寄り駅から徒歩3分、ナポレオンの墓があるアンバリッド(廃兵院)やロダン美術館にも近い。足を延ばせば、サルトルやボーボワールが通った老舗カフェがある。 そこは公的補助で家賃が低く抑えられた社会住宅「イロ・サンジェルマン」(全254戸)で、主に中低所得層が暮らしている。ベランダからはエッフェル塔が見え、隣では中東資本の高級ホテルが建設中だ。 建物の前で住人に声をかける取材をしていると、3年前に郊外から移り住んだという女性が応じてくれた。今は学校で清掃員として働き、息子、パートナーと3人で暮らしている。「この立地で民間賃貸だったら、家賃は今の700ユーロ(約13万円)の数倍になるでしょう」と笑った。 続いて出てきたフリーランスのジャーナリストの男性は40平方メートルの部屋に月額500ユーロ(約9万2千円)で住んでいるといい、「民間なら4倍はする」。 清掃員らエッセンシャルワーカーが、都心のど真ん中で生活の基盤を築いている。パリは、富裕層などから「富」を集め、中低所得層向けの社会住宅を増やす「再分配」を進めているのだ。多様な所得層が共に暮らす「社会的混合」 パリ市の住宅運営会社RIVP幹部ローラ・バシレフさんによると、管理人が暮らす1戸を除き、最も所得が低い世帯向けが129戸、中低所得世帯向けが99戸、中間所得世帯向けが25戸ある。フロアや棟で分けず、分散させている。一人暮らし向けと家族向けも交ぜている。 7区の富裕層エリアに大型の社会住宅を設けたことも含め、これらは多様な人々が同じ地域や建物で暮らすことを奨励する政策理念「ミクシテ・ソシアル(社会的混合)」の実践だという。 パリ12区にある、かつて兵士らが暮らした旧ルイイ兵舎(Caserne de Reuilly)跡地の大規模再開発(約600戸)でも、この理念は徹底されている。社会住宅事業者パリ・アビタの担当者アマランダ・サンチェス氏によると、敷地内の住宅は、社会住宅(50%)と中間層向け住宅(20%)、家賃規制のある民間賃貸住宅(30%)で構成されている。社会住宅の棟では、所得に応じた3段階の家賃帯の部屋を「同じフロア内に」混在させている。家賃帯が違っても住宅の質は全く同じだという。 このプロジェクトは、建物内だけの「混合」にとどまらない。かつて高さ3メートルの壁に囲まれ、一般市民から閉ざされていた軍事施設の壁を取り払い、日中は誰でも通り抜けられる空間へと生まれ変わらせた。広さ5千平方メートル近い公園や保育施設が設けられ、周辺住民にも開放されている。 都市計画上は、建物を密集させることで戸数を増やすことも可能だったが、あえて公園の整備を優先した。異なる所得層の住民が同じ公園で過ごし、子どもたちが同じ保育施設を利用する。近隣を巻き込んだ「社会的混合」の拠点とすることを重視したという。市場による排除への抵抗 これらパリの社会住宅政策を主導したのが、2023年まで10年間ほど副市長として住宅政策を率いたイアン・ブロッサ上院議員(46、共産党)だ。26年5月、市庁舎で取材に応じた。 社会住宅を増やす狙いについて、ブロッサ氏は「パリで働く人々が、パリで生活できるようにしたい。しかし、市場は逆の結果をもたらし、労働者や中間層をパリから排除してしまう。私たちの政策は市場による排除への抵抗です」と説明した。 その抵抗がパリで本格化した…






