2026年7月4日 19時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●米アンソロピックが公開した先端AIの運用が米政府の命令で突如停止に●先端技術の管理が自国の利益を最優先にする道具として使われかねない危うさもある●企業を巻き込み、賛同する国を増やしながら、国際ルールを整備していくことが必要だ
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先端AIの取り扱いをめぐる混乱が続いている。 トランプ米大統領が、企業による先端AIの公開に先立ち、政府が事前評価するという大統領令を6月2日に出した。サイバー防御や情報共有のための仕組みを設け、評価基準もつくるという。企業に義務を課すものではないが、規制に慎重だった姿勢を転換したと受け止められている。 背景には、先端AI技術が流出し、サイバー攻撃などに悪用される懸念がある。中でも米アンソロピック(ア社)が4月、一部に限定公開した「クロード・ミュトス5」はプログラムの弱点を見つける能力が高いと評価される。 現状ではAIのリスク評価や公開の是非が企業に委ねられている。客観的な基準による審査の仕組みができるのであれば一歩前進といえる。 ただ、今の米政権のような自国第一主義で先端技術が管理されれば、利益を最優先にするための道具として使われかねない危うさがある。あるいは覇権を争う中国との間で互いに思惑をもった取引の材料にされる懸念も拭えない。●公開に先立ち事前検証行うも 6月12日には、ミュトスに安全対策を施して一般公開したばかりの「フェイブル5」の運用が停止された。ア社によれば、安全保障上の懸念から外国人に利用させないよう政府から命令されたという。安全対策の抜け穴が見つかったという指摘に対しては、公開に先立ち、連邦政府とも連携し、安全性の検証を行うなどしたとして反論している。 ア社は6月末、政府の命令が解除されたとして運用再開を発表した。追加の対策を講じたというが、フェイブル特有の問題が見つかったわけではないとの立場は崩していない。政府の意図は判然としないが、一時的にせよ、企業が提供するサービスが一斉停止となった事実は見逃せない。 6月のG7サミットでは先端AIの安全管理を巡る議論もされたというが、期待された成果は出なかった。 今後、特定の国がAI技術を独占するのではなく、広く恩恵をもたらすよう普及させるには、国際ルールや規範づくりが不可欠だ。事業者側への規制だけでなく、政府や当局による人権やプライバシーを侵害するような逸脱した行為を防ぐ取り組みも重要だ。 AGI(汎用(はんよう)人工知能)の開発に向け、計算資源の確保や資金調達に追われる企業自身も、自分たちだけではリスクを管理しきれず、統一された基準やルールづくりの必要性を訴えている。企業を巻き込み、賛同する国を増やしながら対話を続けていくことが何より求められる。最先端AIミュトスとは? 開発したのはどんな会社? ポイント解説「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






