ストーリー俳優・佐々木愛さんに自我をかなぐり捨てさせた 水上勉さんの叱咤山根由起子印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする
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俳優生活65年。82歳の今も舞台に立ち続け、劇団文化座代表として若手を引っ張る。清純なお嬢さんのイメージだった佐々木愛さんが、人間の闇や醜さ、破れた美しさも表現できる大人の俳優に脱皮したきっかけは、恩師と仰ぐ作家、水上勉さんに叱咤(しった)された言葉でした。舞台の初日の前夜、佐々木さんの心に火をつけた一言とは……。「破れた美しさをみせてくれ」 「くそー、おめえって女はなんて女だ」「こらえてくんなーい」……。妻おしんの首を絞める夫の留吉の恐ろしい形相、おしんの苦しげな顔。夫が出稼ぎ中に、おしんは村人の権助に乱暴され、身ごもった。 貧しい寒村での悲劇を描いた水上勉さん作の「越後つついし親不知(しらず)」の「ひとり芝居」は1986年から2002年まで、167ステージに及んだ。おしん、留吉、権助など、1人で7役を務めた。1982年の劇団公演の時は約40人が出演。佐々木さんが主演し、芸術祭大賞(劇団文化座)や紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞した名作だ。 だが、水上さんは、「破れた美しさをみせてくれ」と、この作品を「ひとり芝居」に作りかえた。 佐々木さんは40代になり、清純派から脱却し、人間の恥部も闇も表現できる円熟した俳優にならなければならない正念場の時だった。 原稿用紙55枚、2万字以上のセリフ。80分間で7役を演じ分ける。役に合わせて横隔膜の位置を意識して声の高低を使い分け、呼吸の仕方も工夫した。 水上さんの演出で稽古に励んだが、初日前夜、「そんなことでどこの客が喜ぶと思うか。涙飛ばして鼻水たらしてやれ!」と叱咤され、眠れなかった。一瞬の形相「人間の深奥部の表現」 もう恥も外聞もなく、自我を…この記事は有料記事です。残り941文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
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