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第64回大阪国際フェスティバル2026(朝日新聞文化財団、朝日新聞社、フェスティバルホール主催)ではこの秋、注目の二つの公演が開かれる。牧阿佐美バレヱ団の子供のためのバレエ「シンデレラ」は9月に満を持しての関西初上演を果たす。11月には、リッカルド・ムーティ率いるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演が控えている。楽しい工夫がいっぱい、でも本格的 牧阿佐美バレヱ団による子供のためのバレエ「シンデレラ」が9月、大阪で上演される。プロコフィエフの音楽とクラシックバレエの基本的な型はそのままに、上演時間を短縮。4歳から入場でき、初めての舞台鑑賞にぴったりだ。内容も現代風に。誰もが知る従来の童話には「興味がなかった」という田切真純美(たぎりますみ)(台本・構成・演出振り付け)の手で、若者の心の成長を描く物語へと「変身」した。 シンデレラといえば、義理の家族に虐げられた少女が魔法の力で舞踏会へ行き、王子に見初められる物語。典型的なおとぎ話に、田切は「あんまり興味がなくて」と苦笑い。「シンデレラが受け身ではなく、経験を通して自分の力で進んでいく形にしたかったんです」 生み出したのは、少女の心の成長を追う物語だった。母を亡くして心を閉ざしたシンデレラは、時間が止まったように、母を思って鏡を見るばかり。義理の母と姉妹とは打ち解けられずにいる。押し込めた感情が四季の精となって現れ、心の針は再び動き出す。一歩を踏み出そうと、母が残したガラスの靴を履いて舞踏会へ。そこには同じように母を失った王子がいた。2人は心を通わせ、それぞれ前を向く。 元の童話でシンデレラを虐げた義理の母らは、新しい家族にうまく接することができずに悩む姿に。描写が少なかった王子には、孤独を抱え、父とすれ違う役柄を与えた。「人は一人ひとりが多面的。登場人物にも複雑な思いを抱えてほしかった」。全員の背景を独自に描き、人間味を強調した理由をそう語る。 振り付けはオリジナルで、クラシックバレエの様式を踏襲した。見せ場のバリエーション(ソロ)や主演の品格あるパ・ド・ドゥ(男女の踊り)を存分に楽しめる。「初めて見る子どもたちにバレエの構造や美しさを知ってほしくて。目線を下げないようにしました」 子どもを飽きさせない工夫は随所に仕掛けた。通常は2時間半を超える上演時間を、子どもの集中力が続く1時間半(休憩あり)に短縮。四季の精は色とりどりの衣装で踊って目を楽しませる。リスや鳥、トカゲといった動物も登場し、コミカルな動きでシンデレラを応援したり、人間の姿に変身したり。カボチャももちろん出てくる。 自立し、新しい世界に踏み出そうとする主題そのものが、子どもの多感な心に届くだろう。「感情の揺れ動きを重視し、余白を残しました。『わからない』でもいいんです。せっかくの劇場体験なので、感じて、考える時間になったらいいな」主演の2人、個性的で息ぴったり 牧阿佐美バレヱ団の「シンデレラ」では、今村のぞみが題名役を、プリンシパルの清瀧千晴が王子を踊る。ともに子どもの頃に見た舞台が自分を作った原点だという。今作に触れる子どもたちへ「動物たちやきれいな馬車、変身やサプライズも! 見どころたくさんの生の舞台を楽しんで」と呼びかける。 古典の作品では喜怒哀楽を踊りや表情ではっきり伝えることが多い、と今村。だが今作では、シンデレラの複雑な心情を細かな表情で演じ分ける。舞踏会へ行く決意を固める場面は、なんと座ったままの演技だ。「見る人に感じさせる意図が田切さんにあるのだと思います。悩みながらの挑戦です」 最終的には「素で踊ろう」という気持ちになったとか。「シンデレラは一人で考える時間が多いんだろうな。私も考える癖があるし、バレエ団の仲間に支えられているところも同じ」と話す。 一方、プリンシパルとして責任ある立場の清瀧は「すんなり役に入れました」とほほえむ。王子は父王の期待を背負うが自分の心は追いつかず、シンデレラと出会ったことで新しい世界が見える。「いろいろ経験するから、良い方向に成長できるんですよね」。今作では振り付け補佐も務めた。 2幕にある舞踏会の場面は、バレエ団全体の見せ場の一つだ。訪れた客たちが次々と目の離せない踊りを披露する。楽しさが引き出されているのは演出の妙だけでなく、「個々のダンサーたちの性格も大きい」と今村が明かす。 素のダンサーたちもコミカルなところがあるから? 「あります!」と笑顔で即答する今村に、清瀧も「ダンサーはやっぱり個性的でないとね」。息はぴったり、9月の舞台が楽しみだ。ウィーン・フィルは11月に来日 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が11月、大阪国際フェスティバルに登場する。初来日から70周年となる今年は、巨匠リッカルド・ムーティを指揮に迎え、モーツァルト「交響曲第40番」とチャイコフスキー「交響曲第4番」を演奏する。 ムーティは、ミラノ・スカラ座音楽監督やシカゴ交響楽団音楽監督などを歴任し、世界中の一流オーケストラを指揮してきた。ウィーン・フィルとは1971年に初共演して以来、半世紀にわたって信頼を築いている。 ウィーン・フィルにとって、モーツァルトは最も得意とする作曲家の一人で、「交響曲第40番」は多くの名演奏が残る。チャイコフスキー「交響曲第4番」は「運命」をテーマにした激しさと哀愁を併せ持つ後期の一作。世界最高峰の楽団の圧倒的な音色を堪能できるプログラムだ。開催概要牧阿佐美バレヱ団 子供のためのバレエ「シンデレラ」 9月19日(土)午後2時開演。上演時間約1時間30分(休憩1回含む)▽こども(4歳~小学6年生)S席4千円、A席3千円、B席2千円/おとな(中学生以上)S席7500円、A席6千円、B席4千円/BOX席1万円(こども・おとな同一料金)▽協賛:朝日放送グループホールディングス、ダイキン工業、大和ハウス工業、竹中工務店リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 11月5日(木)午後7時開演▽モーツァルト「交響曲第40番」、チャイコフスキー「交響曲第4番」▽S席4万6千円、他の席種は完売▽特別協賛:大和証券グループ、協賛:アイリスオーヤマ、京阪ホールディングス、塩野義製薬、竹中工務店 ◇会場:フェスティバルホール(大阪市北区) ◇主催:朝日新聞文化財団、朝日新聞社、フェスティバルホール ◇チケットはフェスティバルホール(06・6231・2221、https://www.festivalhall.jp)、「シンデレラ」はほか主要プレイガイドでも発売中