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2016年の熊本地震では、228人が災害関連死と認定され、直接死(50人)の4倍超にのぼった(25年4月時点)。県の災害医療コーディネーターとして支援の調整や助言を担った、熊本大学病院の笠岡俊志・災害医療教育研究センター長に聞いた。 ――そもそも災害関連死とは? 災害による環境の変化やストレス、普段の医療行為が十分に提供できなかったことによって亡くなったり、自ら命を落としたりした方のことです。 ――熊本地震の関連死の特徴は? 熊本地震の場合は228人と言われますが、これはあくまでご遺族が弔慰金に申請して認められた人数であり、地震が原因で亡くなった方はもっとたくさんいらっしゃるのではないかと思います。 直接死に比べて多かったとはいえ、避難者数に対する関連死の割合としては、東日本大震災など別の災害の方が高いという研究もあります。ある程度対策がうまくいった部分もありました。 とはいえ、関連死がかなりの数出てしまったことは事実で、検証や対策が必要だと思います。震度7の揺れに2回見舞われたことや、毎日のように余震が続いたことで、心身への大きなストレスに対応できなかった方が多かったと考えられます。 ――県が21年3月末までの認定をまとめた資料によると、基礎疾患・持病がある方が9割、70代以上が約8割を占めました。 「要配慮者」の方への対応が重要だということが改めて示された結果だと思います。 ――死因としては、肺炎などの呼吸器系の疾患と心不全などの循環器系の疾患がそれぞれ約3割でした。死因に至る「原因区分」として、一番多かったのは地震のショック・余震への恐怖でした。 ストレスを感じると血圧が高くなってしまい、たとえば心臓に持病がある方にとっては大きなリスクとなります。そのため、避難所に血圧計を置くべきだという意見もあります。 避難生活中に、普段飲んでいる薬をいかに続けるかというのも大切です。 ――原因の2番目は避難所生活の負担でした。 当時は、段ボールベッドなどの備品の重要性がそれほど意識されておらず、備蓄も不十分だったため雑魚寝が多く、トイレも不衛生でした。避難所の環境が良かったとは言えません。 発災からしばらくすると改善されました。ただ、熊本地震では発災から1週間以内に亡くなった方が約24%、1週間~1カ月に亡くなった方が約33%でした。 私が行った調査でも、避難所から病院への救急搬送は発災から1週間以内に集中していました。発災直後は避難所で体調を悪くする方が出やすい時期であり、早い時期の対応が重要です。それには、事前の備えが欠かせません。 ――避難所の環境が良くなかったことや余震が相次いだ影響で、車中泊した人も多くいました。 関連死の2~3割が車中泊経験者という報告もあります。エコノミークラス症候群による肺血栓塞栓(そくせん)症で亡くなった方も出ました。 エコノミークラス症候群は新潟県中越地震で問題になりました。熊本地震では、避難所や車中泊避難者を回って足に血栓ができていないかを問診したりエコーで調べたりして、必要な方には弾性ストッキングをはいてもらったり薬を飲んでもらったりする取り組みによって、抑えられた部分もあったと思います。 ――原因の3番目が、医療機関の機能停止や転院などによる初期治療の遅れでした。 阪神大震災で医療的に十分対応できなかった反省から、災害拠点病院やDMAT(災害派遣医療チーム)の仕組みが整備され、改善されてきました。 ただ、残念ながら熊本地震では1500人を超える患者の方が病院避難による転院を余儀なくされました。病院の耐震補強やライフラインなどの備えが不十分だったためです。 あの時の病院避難が間違っていたとは思いませんが、患者さんの移動自体がストレス・リスクになります。熊本地震では搬送中に亡くなった方はいませんでしたが、転院先で亡くなった方が出ました。災害が起きても、必要な医療が継続できるような備えを事前にしておくことが重要だというのが、熊本地震の教訓だと思います。