深掘り炭素シートが「魔法の角度」で性質ガラリ 注目集めるモアレの物理学野口憲太印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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液晶画面をスマートフォンで撮影したときに波のような模様が見えることがある。「モアレ(干渉じま)」という現象だ。そのミクロ版が、物理学の研究分野として注目されている。見えてきたのは、素材の性質を「角度で操る」という新たな世界だ。 物質・材料研究機構(NIMS)の研究室を訪ねると、研究員の岩﨑拓哉さんが「グラフェン」と呼ばれる素材の模型を見せてくれた。 グラフェンは炭素原子が六角形の「蜂の巣構造」に並んだシートのことだ。厚さは原子1個分、0.5ナノメートル(ナノは10億分の1)以下しかない。電子が動き回れて、銅などの金属より電気を通しやすい。 「2枚重ねて、ずらすとモアレ模様が出てきます」 一方を少しずらすと、幾何学模様が浮かび上がる。ずらす角度を変えると、模様はなめらかに変わっていった。ずらして重ねて「超伝導」に 模型は模様が変わるだけだが、ミクロの世界で本物のグラフェンをずらすと、素材の性質がガラッと変わる。 報告したのは、米マサチューセッツ工科大のパブロ・ハリーヨ=エレーロ教授らのグループ。2018年に2本の論文を発表した。 グラフェンを約1.1度の角度でずらして重ねて零下270度ほどの極低温まで冷やすと、電気抵抗ゼロの超伝導体になったり、逆に電気を通さない絶縁体になったりすることを実証した。 ずらして重ねる素材の研究は、ツイスト(ねじる)とエレクトロニクス(電子工学)を合わせた「ツイストロニクス」と呼ばれ、一気に広がった。 学術論文の無料公開データベース「OpenAlex」によると、18年の二つの論文の引用回数は延べ1万2千回以上。ツイストロニクスの関連論文は19年以降、毎年200~500本発表されている。 この発見は、物理学の世界に衝撃を与えた。素材の性質を研究する「物性物理」では、原子や分子の組み合わせを操作することで、その性質をコントロールしていた。そこに「重ねる角度」という新しい手法が加わったからだ。 グラフェン以外にも原子1個分の厚さのシートをつくることができる。この分野の研究を続ける岩﨑さんは「何を、どの角度で重ねるかによって、もとの素材からは予測できないような性質が生み出される。組み合わせは無限で、どんな性質が見つかるか、何ができるかをみんなが探している」と解説する。電子の動き方が変わる「魔法の角度」 ずらして重ねることで、なぜ素材の性質が変わるのか。【日本の素材が貢献】ノーベル賞受賞者も絶賛 日本生まれの小さな結晶が集める大きな注目 素材の性質は、素材の中の電…この記事は有料記事です。残り1219文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






