深掘りブラジル、強さの源流は「貧困」 エース・ビニシウスが背負う期待2026年6月29日 11時00分軽部理人印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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サッカーワールドカップ(W杯)北中米大会で決勝トーナメントに進んだ日本は、1回戦で最多5度の優勝を誇るブラジルと対戦する。記者はサンパウロ特派員時代、連載記事で「サッカー王国」の源流を探った。見えてきたのは、貧困から抜け出そうとする切実な思い。今大会で4ゴールを挙げたエース、ビニシウスの歩みにも重なる。犯罪地区で育ったブラジル代表ビニシウス 「貧困」を照らす希望の星【連載】サッカー王国の光と影ブラジルサッカーの強さの秘密に、スラム街から生まれるスター選手の存在があります。彼らを夢見ることが、スラム街の子どもたちを犯罪から守る防波堤にもなっています。貧富の差が生む光と影を見つめます。 斜面に、赤茶けたれんがの家々が隙間なく張りついている。薄暗い体育館のような施設で、子どもたちがボロボロのゴールネットにシュートしていた。 2025年2月、ブラジル・リオデジャネイロのファベーラ(スラム街)を訪ねた。貧富の差が大きいブラジルには、国内に1万以上のファベーラがある。世帯所得が月収2900レアル(約9万円)以下の貧困層は、国民の半数にも及ぶ。 「将来、何になりたい?」 そう尋ねると、多くの子どもが迷わず同じ答えを返した。 「プロ選手になって、大金持ちになりたい」 貧しい家庭の子どもたちにとって、サッカーは家族を支え、人生を切り開くための数少ない道でもある。 現在のブラジル代表にも、貧しい環境からはい上がった選手は多い。中盤の要カゼミロ、19歳の「新星」エンドリッキ、そしてビニシウスだ。 ビニシウスが生まれ育ったのは、リオデジャネイロ郊外の街だった。ブラジル最大級の麻薬組織の影響力が強く、治安は極めて悪い。 ビニシウスの学校の元担任は、当時をこう振り返る。「彼の身近には麻薬があふれていた。『悪の道』に進んでもおかしくない環境だった」 日々の食事にも困る暮らしの中で、ビニシウスはサッカーに熱中した。18歳でスペインの名門レアル・マドリードに移籍し、現在の年俸は2千万ユーロ(約37億円)を超える。 彼を知る人はこう語る。「ビニシウスは貧しさを照らす希望の存在だ。彼の存在が、子どもたちが『悪の道』に進むのを防いでいる」 ビニシウスは現在も定期的に地元を訪れ、子どもたちとの交流を続けている。24年12月に国際サッカー連盟の最優秀選手に選ばれた際には、こうスピーチした。「不可能だと思ってあきらめてしまいがちな子どもたちのために、僕はこれからもプレーしたい」 近年のブラジル代表は、日本で頂点に立った02年日韓大会を最後に、W杯優勝から遠ざかる。若くして欧州へ渡る選手が増え、ブラジルサッカーらしい足元の技術が失われている、といった課題も指摘される。 それでも、伝統ある黄色のユニホームには、貧困の中でボールを追う子どもたちの夢が重なっている。対戦する日本が向き合うのは、目に見える強さだけではない。人生を変えようとしてきた選手たちの歩みそのものでもある。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません