【社説】安全軽視を生まない社会に 知床の観光船沈没事故2026年6月18日 19時01分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするこの社説のポイント●26人が犠牲になった遊覧船事故で、運航会社の社長に禁錮5年の判決が言い渡された●判決は社長のずさんな運航管理を批判。事故現場にいなくても、責任を重くみた●事故を機に始まった安全対策を進め、事業者の意識をより高めることが欠かせない

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乗客の命を預かるのは、現場で乗り物を操る人だけでなく、その上に立って安全な運航を管理する人もまた同様であり、その責任も重い。安全はすべてに優先するという大原則を改めて確認する機会としなければならない。 北海道・知床半島沖で2022年、遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没し、乗客・乗員20人が死亡、6人が行方不明となった事故で、業務上過失致死罪に問われた運航会社「知床遊覧船」の社長(62)に対し、釧路地裁は禁錮5年の判決を言い渡した。 社長は運航管理者でもあり、気象状況などを総合的に判断した上で、安全に船を出せるか、乗客・乗員の命にかかわる重い判断を日々、反復継続して行う立場にあった。 その管理のずさんさを判決は厳しく批判した。判断は経験の浅い船長に任せ、事務所にいないことが常態化し、無線の故障もそのままにしていた。「単発的、偶発的なものにとどまらず、安全を軽視する平素からの態度が形となってあらわれた」との指摘も当然の評価といえる。 管理する側の責任を重視する司法判断は続く。16年に長野県軽井沢町で起きたスキーバス事故では、運行会社の社長と運行管理者に対する一審の実刑判決を、今年5月の二審も維持した。事業者への警鐘が連打されている。どうすれば安全に、見直す契機にも 遊覧船の事故は、旅客船の安全対策を見直す契機にもなった。国は事故後、66項目に及ぶ再発防止策をまとめ、年度内にはすべて導入される見込みという。運航管理者の試験制度を導入し、資格の2年ごとの更新制も開始。抜き打ちを含む事業者への監査を強化した。実効性を検証しながら、事業者の安全意識を高めていくことが欠かせない。 気になるのは、船舶検査を担う人員不足だ。沈没した遊覧船は事故の3日前の国の検査で、ハッチの不具合が見過ごされている。沈没はハッチから流れ込んだ海水も一因で、国の責任は免れない。体制整備を怠ってはならない。 利用する側も乗り物を選ぶ際、安全にかかわる情報の積極的な公開を求める姿勢を持ちたい。知床の事故後、事業者に対し、船に積まれる救命設備の数や過去5年間の事故件数といった情報の公表を義務づけるなど国の対策も広がるが、さらなる拡充を望む。 当たり前の日々が突然断ち切られ、かけがえのない存在を失った被害者家族の心情は察するにあまりある。「人が止めることができた事故であり、人災だ」という遺族の言葉に、関係者は向き合わなければならない。知床遊覧船沈没、社長に禁錮5年判決 「航行中止させる義務あった」「社説digital」は、朝日新聞朝刊に掲載する社説をいち早くお届けします。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする