現場からポイペト=伊藤弘毅印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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タイとカンボジアの国境紛争が再燃してから1年が過ぎた。軍事衝突による双方の死者数は100人を超え、停戦合意後もにらみ合いが続いている。国境封鎖の長期化は現地の日系企業の活動にも影を落としている。【そもそも解説】タイ・カンボジアの紛争、なぜ過熱? 対立の根源は タイ東部との国境にあるカンボジア北西部の街ポイペト。5月下旬に近郊の工業地帯をたずねると、セメント工場の倉庫の屋根が空爆の衝撃でめくれ上がり、大きな穴が空いていた。 ポイペトは首都プノンペンからタイへと通じる陸上交通の要衝だが、昨年5月28日の国境紛争の勃発で状況が一変した。タイは国境検問所を閉鎖し、昨年6月から人やモノの流れは止まったままだ。昨年12月にはタイ軍のF16戦闘機による空爆の標的に。紛争以前は砂煙を上げて周囲を大型トラックが行き交っていたが、今では交通量は大きく減った。「爆撃音を聞き、黒煙も見た」 空爆の地点から約1キロの工業団地内に、家電製品の電線を製造する行田電線(本社・大阪市)の工場がある。現地法人社長の石畠寛和さん(56)は「工場にいたカンボジア人従業員は空爆の激しい爆撃音を聞き、黒煙も見た」と話す。 ポイペトは近年、タイに拠点を置く日系企業が、比較的人件費の低いカンボジアに生産機能を分散させる受け皿として発展してきた。タイに拠点を置く行田電線も、2019年にこの工場を開設。日本向けのガス機器の部品を組み立てている。タイの人件費が上昇するなか、カンボジアを主要拠点の一つに育てる構想も温めてきた。 ところが、国境が封鎖され、3時間弱で済んだタイ側からの部品の搬入や搬出が停止。8時間以上かけて南部シアヌークビルの港を経由するルートに切り替えざるを得なくなった。輸送の燃料費がかさみ、利益が押し下げられている。 昨年12月の空爆後は、工場の操業を2週間止めた。26年1月に再稼働したが、従業員の1割ほどは紛争地に近いポイペトに戻らなかった。紛争の終結は見通せず、石畠さんは「今は新事業を進められるような環境ではない」と話す。トランプ氏仲介も…2度の軍事衝突 タイとカンボジアは国境の領有権をめぐって長年もめてきたが、国際司法裁判所(ICJ)が争いのもととなっていたクメール寺院の「プレアビヒア寺院」などをカンボジア領と認定し、いったん争いは落ち着いていた。ところが、昨年5月に国境係争地で銃撃戦が勃発。両国の関係は急激に悪化し、7月には空爆や砲撃を伴う武力衝突に陥った。 トランプ米大統領らの停戦仲介で一時的な停戦に至ったものの、昨年12月に再び軍事衝突が発生。12月27日に米中などの仲介で停戦合意に至ったが、両国軍は今も国境地帯に重火器を配置している。 今年5月5日には、01年に…この記事は有料記事です。残り629文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりませんこの記事を書いた人伊藤弘毅アジア総局員兼ニューデリー支局員|アジア経済担当専門・関心分野国際情勢、国家の開発、アジアと日本関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする