コラム・寄稿輝く個の多様性 信長貴富さんが見たおかあさんコーラス大会2026年7月17日 15時00分印刷するメールでシェアするFacebookでシェアするXでシェアするはてなブックマークでシェアする
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7月4、5日に催された「第49回全日本おかあさんコーラス関東支部大会」(全日本合唱連盟関東支部、朝日新聞主催、キユーピー協賛)の選考委員を務めるため、宇都宮市文化会館を訪れた。2日間で9県の90団体が参加した大イベントである。 「審査員」ではなく「選考委員」と呼ばれるのが、この大会が「コンクール」とは趣を異にする点の一つである。規定には「音楽性、芸術性、独自性、演出などを総合的に判断し選考する」とある。技術を競うだけでなく、舞台芸術としての合唱の多様性を披露し合う大会。課題曲はなく、8分という制限時間があるのみで、自由度が高い。 それゆえに、選曲は色とりどりである。ラテン語の宗教曲もあれば、八代亜紀やジュディ・オングも登場するといった具合。合唱で歌われる「舟唄」を想像するだけでも楽しいではないか。 演奏スタイルも様々で、シリアスに音楽だけを届ける団体もあれば、ダンスや衣装の早変わりなどの演出を取り入れる団体も少なくない。自由度が高いのは、規定がそう仕向けているからではなく、この大会の参加者たちが長い年月をかけて育んできた文化なのだ。 選考の結果、全国大会に出場できる団体が選ばれるのだが、関東支部の場合、コンクールのように成績の上位から順に選出されるわけではなく、優秀賞受賞団体の中からくじ引きで決定するというのもユニークだ。この、ある種の「ユルさ」も、おかあさんコーラス大会に多様性をもたらしているのかも知れない。 実際の演奏においても、多様な「個」の輝きが印象に残った。新潟県の「さつき&ひまわり」(塚田佳男指揮、桜井一美ピアノ)は、『花の詩(うた)』(大田桜子作曲)から3曲を披露。情感の表出にたけた演奏で、日本語の発音において優れた技術を示す正統派合唱団。一方、途中のリズミカルな場面で、歌い手が思い思いの身ぶりを伴いながら歌っていたのが、いわゆる「振り付け」とは異なる自然さで、一人一人の自発的な歌が合唱へと高まる姿を見た思いだった。 神奈川県の「アンサンブルMIMI」(斎藤三和子指揮、鈴木真澄ピアノ)は、『トヨさんの言葉』(山中惇史作曲)から2曲を歌った。ユーモアと愛情にあふれた楽曲の魅力を引き出した演奏。それだけでも見事なのだが、ちょっとした振り付けが加えられており、これが良かった。全体で同じ動きをするマスゲームとは異なり、ある一組の身ぶりが別の組に飛び火し、やがて全体の身ぶりに発展するといった、予測の付かない演出。なんというセンスの良さ。奇をてらうわけではなく、作品の本質を射抜いているのがすごい。 合唱の舞台では、とかく全体の動きや声を「そろえる」ことに関心が向きがちだ。しかし、一人一人が異なる表情を持つ人間だということを合唱でも示せるのだと、この2団体のステージは教えてくれた。 一人一人が異なるということで言えば、おかあさんコーラス大会がスタートした約50年前に比べると、女性の生き方も多様化した。まだまだ性別役割から女性が解放されたとは言い難い日本社会ではあるが、「おかあさん」というアイコンに女性像を代表させる時代は過ぎ去り、いよいよこの大会も、来年の第50回には新たな名称で再スタートすると聞いている。今後、この大会が幅広い参加者を得ながら、新たな価値を創造していくことを期待したい。 ◇ 全日本おかあさんコーラス全国大会は8月22、23日、広島県福山市で開かれる。有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません






