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5月のカンヌ国際映画祭で、主演のビルジニー・エフィラさんと岡本多緒さんに女優賞をもたらした濱口竜介監督の「急に具合が悪くなる」が公開中だ。パリを舞台に、現地にある介護施設の施設長と、がん患者で日本人の舞台演出家の対話による交流が描かれている。介護やケアも大きなテーマとなっている長尺作品の魅力を読み解く。「原作の言葉を受肉」 白石正明さん(ケアに関する本をてがける編集者) 哲学者の宮野真生子(まきこ)さんと、人類学者の磯野真穂さんの往復書簡による原作は、生と死をめぐって1対1で言葉のやりとりをしていきます。これをどう映画化するのか気になっていましたが、高齢者施設を舞台にしている点にまず驚きました。 高齢者施設では、体がこわばればもんでほぐすこともあるし、失禁すれば洗うために局部に触れることもある身体接触の場。そうした場所を舞台にすることで、原作で交わされた言葉を「受肉」させているように感じました。 また、その施設でフランスで生まれた「ユマニチュード」というケア技法が使われることにも驚きました。私は医学書院で「ユマニチュード入門」という本を編集しましたが、この技法は見る・話す・触れる・立つの四つを柱に、ケアする相手をより人間的に扱う介護の方法です。映画の中では入室時のノックの作法や、何をしているのかを伝えながら体に触れる方法が丁寧に可視化されています。 こうした丁寧なケアをしたいというのは現場にいる方は当然考えるのですが、予算や時間の制約もあるし、責任をどうするかという問題も生じます。高齢者施設はある意味で最もその矛盾が先鋭化しているところ。立って暴れてけがをしたら自分たちの責任になるから、ベッドに縛りつけたように寝かせておこうとなりかねません。 映画でも、施設の介護方法を変えていきたい主人公の施設長と、それに抵抗する看護師長との対立があります。ただこの映画のすばらしさは、それを善悪の構図で描いていないところ。強い責任感をもった看護師長が魅力的に見えるのはそのためです。 映画では、ユマニチュードの…この記事は有料記事です。残り1782文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

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