現場から出産費用、全国一律に 価格低ければ「閉院するしか…」産科現場の声福宮智代印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする

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標準的な出産費用を公的医療保険でカバーすることなどを盛り込んだ健康保険法の改正案が成立する見通しになった。これにより、正常分娩(ぶんべん)の費用の基本価格は全国一律となる。妊婦の経済的負担は軽くなるが、現場の産科施設からは、いま以上に経営が難しくなるのではないかとの声が出ている。 現在、正常な出産は公的医療保険の対象外で、医療機関が自由に価格を決められる。新しい制度では、正常分娩にかかる費用について、全国一律の基本価格を設定、公的医療保険で全額をカバーする。妊産婦の負担を軽くするために支給している50万円の出産育児一時金は廃止する。改正法の施行時までに基本価格の金額や、含まれる対象範囲などを国が決める。 川崎市と横浜市で産婦人科を開業する「はぐくみ母子クリニック」の輿石(こしいし)太郎院長は、国が設定する基本価格が「著しく低い金額で固定されて黒字運営ができなくなったら、閉院以外の選択肢はなくなる」と話す。都市部と地方では出産費用に差 厚生労働省によると、2024年度の出産費用は全国平均で約52万円。最も高いのは東京都の約65万円で、神奈川県は約59万円と全国で2番目に高い。一方、熊本県は約40万円と、都市部と地方で差が大きくなっている。差額ベッド代などを含めた妊婦合計負担額では、最も高い東京都は約75万円、2番目の神奈川県は67万円。 クリニックでは現在、出産の基本的な費用は初めての出産で74万円、2人目以降の出産は入院日数を短くして66万円に設定している。25年の分娩数は2施設で1780件だ。 輿石院長は「どのくらいの出産費用の設定で経営が成り立つかは、扱うお産の数や土地建物のコスト、人件費などによって変わってくる。周辺の相場も加味して、なんとか経営上成り立つ価格に設定している」と話す。 このクリニックのある大都市圏では、施設の賃料も高い。入院中の妊婦に提供する食事を調理するスタッフなどの人件費も高い。近年の物価高の影響で、食材費が高騰しており、4~5年前と比べて1.5倍になっているという。 新制度により全国一律の価格になると、これまでクリニックが設定してきた費用を下回る可能性がある。そうした場合、赤字になってしまい、現在の水準の医療サービスを提供し続けることが難しくなるかもしれない。緊急時は24時間態勢、無痛分娩にも対応 お産の現場では、緊急時の対応も必要となる。このクリニックでは、帝王切開などの緊急時にも24時間対応できるよう、夜間も5人以上の医療従事者を配置。その分多くの人件費が必要だ。さらに医師や助産師には安全面や接遇面で高いレベルを求めている分、給料も相場より2割以上高い水準に設定しているという。 輿石院長は「特定のスタッフの自己犠牲に頼るのではなく、幅広く人材を育成しつつ、適切に配置することで良質なサービスを提供できるよう運営している」と話す。 出産時の痛みを和らげる無痛…この記事は有料記事です。残り270文字有料会員になると続きをお読みいただけます。※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません関連トピック・ジャンルジャンル印刷するメールでシェアするFacebookでシェアする